GPSがズレていく⁈ 北磁極の動きにスパコンは追いつけるのか
2019-08-16
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人生初バイトの面接を受けるためにGoogle Mapsを使って歩いていたら、お店ではなくごみ収集所へ突っ込んでいって「目的地は右手にあります」とナビに無感情な報告を受けたことはあるでしょうか? 右手にあるのは巨大なごみ箱です。

ないという声も聞こえてきますが、これは稀代のテクノロジー機器ブレーカーであり、破滅的に方向音痴なマーケティングチーム・奥山の失敗談です。最近は本社から10分程度で着くはずの田町駅前にあるFIXER経営のプログラミング教室(Universal KIDS)に毎回辿り着けず、かといって地図アプリとの相性はよくないので、電車の音と野生の勘だけを頼りに20分ほどかけて移動しています(……電車の音が止まるのはあっちの方だ! それ行け!)。

しかしもしかしたら地図アプリを使っても目的地に辿り着かないのは自分のせいではないかもしれません。どうやらGPSがズレてきているらしいのです!

どうしてGPSがズレるんだ⁈

GPS、もとい位置情報システムはWorld Magnetic Model(世界地磁気モデル)、通称WMMを基にしています。そしてWMMは地磁気を追って位置を算出しているのですが、この地磁気というのが厄介者なのです。

そもそも地球がマグネットのように磁気を帯びているのはご存じでしょう。学生の頃に地球を覆うように南北の磁場をつなぐ何本もの線が描いてある図を見たことがあると思います。

この磁場というのは、地球の内部にある「外殻」と呼ばれる部分に流れる液状の鉄とニッケルの対流によって作られているという考えが一般的です。

「それでも地球は動いている」

なんて言葉は有名ですが、動いているのは地球だけではありません。磁極もなんです。その中でも北磁極は常に動き続けていて、過去100年ほどは真北に向かって移動していました。そこでWMMは5年ごとに位置を北磁極の位置を修正しているのですが、どうやらここ最近は何やら磁極の動きがおかしいのです(ちなみに北磁極は方位磁石が示す北のてっぺんで、地球の自転軸としての真北である北極点とは別)。

動きが速すぎるから5年と言わずに今、更新してくれ!

驚くことに、北磁極の移動スピードが年々速くなっているようです。70年ほど前は1日の移動距離が30メートル弱だったのに対し、今では55メートルを超えています。5年毎の更新は、次回2020年にあるはずだったのですが、2018年の時点で予測よりも速く動く北磁極のせいでGPS機能を持つ全ての機器の精度が危うくなりだしました。

携帯も、飛行機も、カーナビも。位置情報が狂ってしまえばサービスが受けられなかったり、悪くすれば大事故が起きます。さらに軍事機器はほんの少しのズレが命取りですから「危険信号! 危険信号! アラート、ウーウー!」な状態です。恐らく当社のMaaSチームも他人事ではないでしょう。

これでは駄目だと立ち上がった米国は、今年の2月に予定を早めて更新を行ったのですが、政府閉鎖があったために公共への修正済みデータの提供が遅れました。

今は更新されましたが、どうして移動スピードが上がっているのかはいまだに正確にはわかっていません。カナダとシベリアに存在する磁気が北磁極を引っ張り合っているという説もあれば、外殻の液状の鉄の比重が微妙に均等ではないので密度の差でボコボコしていて急激に上昇するポイントが出てくるのではないかという説もあります。

地球物理学者がスーパーコンピューターを使っての大規模なシミュレーションを行って研究していますが、100万年ごとに南北の磁極が入れ替わったり、その直後は磁力が弱まったりと、変化がダイナミックすぎて中々正確に予測が立てられないのが現状です。

同じような急激な変化はこれからも予想されるため、定期的な更新でどこまで追いつくことができるのか、不安要素がある位置情報。

他にも自転が少しずつゆっくりになっているために1日の長さが徐々に伸びていたり、異常気象が続いていたり、一瞬一瞬では感じられないけれど着実に地球の環境は変化しています。

これから地球はどうなっていくのでしょうか。

参考記事

National Geographic. "Magnetic north just changed. Here's what that means."