こんにちは。FIXER Marketing & Salesの竹中です。
今回は2019年6月12~14日に開催されたAWS Summit 2019のセッションの中から私の印象に残ったものをご紹介したいと思います。ちなみにこの記事の執筆中にも会期は続いており、FIXERのほかのメンバーも参加レポートを当Blogへ掲載してくれます。
さて、本稿でご紹介するのはタイトルにもありますように住信SBIネット銀行様のセッション“さよなら、銀行。” ~住信SBIネット銀行の挑戦~です。非常にチャレンジング、というか内容が気になる題名ですね。
セッション内容はSBI様の沿革と、金融ITの歴史から始まりました。(手前味噌ですが、銀行システムの歴史については私の連載もありますので併せてご覧いただければ、と思います)。SBI様は創業期から他の銀行に先駆けて先進的なサービスを提供されていて、特に最近ですと2016年に日本国内で初めて更新系のオープンAPIをFintech企業へ提供されたり、Rippleを使った海外送金の仕組みに関するニュースなどが取沙汰されました。
そんな中で私が最も注目したのが、SBI様の全社をあげたクラウド化のロードマップです。2012年には個人情報を含まないシステムでAWSの利用を開始し、2017年には「すべての」システムのAWS移行を決定されています。2019年からはMicroserviceやServerlessなどクラウドネイティブな開発を試行していく、ということで完全にクラウド化の下地が整っていると言えるでしょう。私も数多くの銀行様とお会いしましたが、ここまで技術的にも意識的にも先進的な銀行様は極めて少ないです。
また、近年の事例では漸進的なインターネットバンキングシステムのAWS移行が紹介されておりました。すでに今年3月にはWebサーバとAppサーバの移行は完了し本番稼働しているそうで、2020年中にはDBサーバを現行のオンプレOracleからAWS Aurora Postgre SQLへマイグレーションする、とのこと。この一連のチャレンジにより、現行と同等のSLAを担保しつつ1.5倍のスペックと83%のコスト削減を達成する見込みです。まさにミッションクリティカルなシステムのクラウド化の衝撃ですね。FIXERもクラウドネイティブなインターネットバンキングの構築案件を手掛けており、非常に気になる事例でした。
そしてセッションは核心に近づきます。タイトルの“さよなら、銀行”とはSBI様の10年記念サイトの名称であり、同社の思い描くバンキング(バンク、ではなくバンキング=機能としての銀行、であるところが肝です)の在り方そのものです。曰く、今後の銀行は他の企業に対し黒子のように預金や融資や為替を機能として提供するようになり、Banking as a service(BaaS)が日本でも当たり前になるということです。
BaaSなるものは耳にされたことがない方もいらっしゃるかもしれませんが、海外ではすでに多数の事例があり、最も有名なのはシンガポールのDBS Bankかと思います。
こうしてこれからの銀行はより自然に、誰も意識することなくサービスの中に溶け込んでいき、最後にはその色が見えなくなっていくのだと思います。そしてその時が本当の意味で “さよなら、銀行” になるのでしょう。
そんなメッセージが感じられる素晴らしいセッションでした。
お読み頂きありがとうございました。