「塩」の歴史を学ぶ
2020-04-15
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はじめに

はじめまして!

2020年に福島高専を卒業し、縁あってFIXERで働くことになりました。斑目 遥斗と申します。 

まずこの章で簡単に自己紹介をしたいと思います。 

高専の学科はコミュニケーション情報学科という、経済経営を中心に学ぶ学科です。学校の授業でもプログラミングはありましたが、趣味程度にWeb開発をしています。

ゲームやクイズ、あとはダンスも好きです。

さて、就職記念に『入社1年目の教科書』という本をいただきました。この本の中を見てみると、「世界史ではなく、塩の歴史を勉強せよ」という見出しがあります。

私は世界史を趣味で勉強している(クイズ対策)程度です。しかし、塩の歴史は非常に面白く、勉強すべきという著者の意見には激しく賛同します。というわけで、塩の歴史に興味を持っていただけるような記事を書いていこうと思います。

クイズ好きとしての側面を活かした記事にしたいですね!

目次

  1. 「塩」って何ですの?
  2. 「塩」と健康の歴史
  3. 現代人の給与が「塩」だったら労基モノだろう
  4. 「塩」づくりと日本の食文化
  5. すばらしき「塩」!

「塩」って何ですの?

塩湖
塩湖。ウユニ塩湖に一度行ってみたいです。

歴史を紹介する前に、塩についての基礎知識を。誰でも知っているものだからこそ、改めて整理する必要もあるってものです。 

塩の化学式はNaClで、いわゆる塩化ナトリウムです。無色透明の結晶ですが、光が乱反射している影響で白く見えます。ホッキョクグマと同じ理屈ですね。

英語はsaltですが、これはsalという、昔の言葉で塩を意味していた言葉に由来します。他には、salad(サラダ)やsalary(サラリー)も同じ系譜です。 

漢字では「塩」ですが、旧字体は「鹽」という字らしいです。なんだこれは。部首は「鹵」で、これ自体が、岩塩が袋に入っている状態を表しているようです。元は岩塩を意味していたため、土へんで書くみたいです。

「塩」と健康の歴史

さて、塩はいまでこそ身近な存在で、料理には欠かせないものになっています。料理の「さしすせそ」なんていうほどですからね。健康を気にしている方は、毎日の塩分量を抑えめにしようと考えているのではないでしょうか?

血圧計
血圧計。でも塩分と血圧の因果関係はあまりないそうです。

そんなにまで身近になった「塩」ですが、果たしてどれほど昔からその存在があったのでしょうか。中国最古の医術書物『黄帝内経』にその記載が確認されます。なんと読むでしょうか。

はい、これは〈こうていだいけい〉とか〈こうていだいきょう〉とか読みます。インターネット上では「京都大学貴重資料デジタルアーカイブ」などでその原典を見れます。読める方は、転職して中国の古典書物を解読する道も検討すべきかもしれません。私は無理でした。

『黄帝内経』は紀元前200年ごろに書かれた医学書です。2011年にはユネスコの「世界の記憶」に登録されています。クイズでたまーーーーーーにこの書物の名前がでますね。本当にたまーに。それはおいといて、少なくとも紀元前200年ころには塩が存在していたことがわかります。

(余談:紀元前はB.C.で Before Christの略称ですが、紀元後はA.D.と表記します。これはAnno Domini、主(キリスト)の年という意味です。クイズ頻出です。非キリスト教徒に配慮して、CEすなわちCommon Eraと表記することも増えました)

『黄帝内経』は医学書なわけですから、医学的な内容が記載されています。残念ながら原典を読むことが私にはできないので、意訳・解読したものを読むしかないのですが……

これが地味に高い!!

そして古典で読めるかも不安!!!

中古であればだいぶお安く買えます。古代中国の医療に興味がある方はぜひ買ってみてください。「塩」の歴史を追うだけならばネットでも調べられます(信頼性は保証できないですが)。

現代人の給与が「塩」だったら労基モノだろう

先にsalaryの由来がsalであり、salは塩を意味するというお話をしました。コトバンクに掲載されている『世界大百科事典』には次のような記載があります。

ローマ時代には役人や軍人に塩が支給され……(中略)……英語のサラリーsalaryは塩の支給を意味するラテン語のサラリウムsalariumに由来している

『世界大百科事典 第2版』,コトバンク,https://kotobank.jp/word/salary-1244266
グラディエーターの甲冑らしいです。

このsalarium自体がsalに由来しています。salは印欧祖語と考えられています(印欧祖語自体存在していたのかが曖昧)。

これを見ると皆さん、こう思いませんか?「えっ、じゃあ塩が給料だったの?」
この明日には何がどうなっているかわからない現代社会で、「我が国の給料は今月から塩に換算して支給する!」なんて言われたらどうでしょうか。

Fintech事業の積み重ねが一瞬でパーです。Saltech事業を始めるしかありません。

鯛の塩釜焼きを作りたくても、鯛を買うお金がありません。ただの塩焼き──否──焼き塩です。それこそ塩の過剰摂取で不健康です! これは『黄帝内経』を読むしかあるまい。

落ち着いてください。これは解釈違いという説もあるのです。

遡ること2000年弱、ガイウス・プリニウス・セクンドゥス(23 - 79)という博物学者がいました。彼は西暦77年に『Naturalis Historia』という本を書きました。日本語でいうと『博物誌』です。プリニウスはこの本の中で、ローマでは塩が支給されていた! という説をあげました。

しかし常識的に考えて、ローマの兵士は塩だけで生きていけません。確かに当時の塩は高価なものだったのでしょうが、兵士が塩だけ摂っても戦力になりません。Saraliumとは「塩」そのものを指していたのではなく、「塩」を買うための補助金だった。そう考えるのが妥当ではないか、という説もあります。

塩よりもお金のほうがいいですよね。

何にせよ、今とは違って古代の塩は相当高価なものだったことは間違いありません。

(余談:プリニウスはヴェスヴィオ火山が噴火し、その煙やら熱やらで亡くなったとされています。ヴェスヴィオ火山に、登山電車が開通したときにできた曲が『フニクリ・フニクラ』です。一度は聞いたことある曲かと思いますが、これはよくクイズに出ます)

「塩」づくりと日本の食文化

「塩」といわれるとどういうものを想像しますか?普通に想像する「塩」はやはり白い結晶質のものですよね。まあ白いのは先述した通り、光の乱反射によるものなのですが。

塩は無色透明だといっても、岩塩とかを見てみるとピンク色のものもあります。岩塩とは堆積岩の一種なので、鉄とか銅とかが含まれています。これが塩の色味成分になっており、岩塩からこういった成分を取り除くとちゃんと無色透明です。

ところで、日本では岩塩を採取することが難しいです。なぜかって?島国だからです。そんなわけで、日本の「塩」となると昔から海塩です。

話は変わって、和食の世界では、料理の「さしすせそ」なんて言ったりもしますね。でも醤油と味噌って塩が使われていますね。和食は塩分過多だから危ない! なんて見出しの記事もあります。これは醤油とか味噌にも塩が含まれているからです。

みそ汁は本当においしい。

味噌の由来をさかのぼると、中国の「醤」という調味料らしいです。「醤」は肉をすり潰し、麹や酒、塩とともに漬け込んで発行させた調味料です。これが日本に伝わって「未醤」となりました。味噌は「未醤」の名前が時代を経て変わった名前のようです。醤油も「醤」油なので、ルーツは同じものですね。
そんなわけで「さしすせそ」なんていいつつ、3/5が塩由来のものとなっています。

かの徳川家康の側室・お梶(英勝院)にも塩にまつわる逸話が残されています。要約すると、

この世で最もおいしい調味料は塩で、どんな料理でも味を調えられるんやで。

だけど最もまずい調味料も塩で、入れすぎると食えたものじゃないぜ。

家康の寵愛を受けたお梶の方|徳川家康ー将軍家蔵書からみるその生涯ー,国立公文書館,http://www.archives.go.jp/exhibition/digital/ieyasu/contents8_03/ から要約

だそうです。お梶は女性なのでこんな喋り方ではないですね。

すばらしき「塩」!

さて、「塩」とは由緒ある素晴らしき万能調味料であることがわかりました。ある時には万能調味料で、ある時には医学に関連し、ある時には給料ほど高価なものとなる。これだけでも「塩」の素晴らしさがわかったのではないでしょうか?

といっても私も「塩」の勉強は学生時代に齧った程度なので、金融と経済の勉強がてらもっとインプットを増やしたいですね。

少なくとも『黄帝内経』を読むことはないと思います。

塩が身近にある世の中です。勉強も大事ですが、食生活も気を付けてエンジニアとして成長していきたいな、といいことを言っておきます。

最後に、クイズ好きならではの色を出したいので、クイズを出題したいと思います。ぜひクイズを解いて復習しましょう!

「塩」クイズ

Q1. 英語の「サラリー」の由来となった、かつて古代ローマでの給料としても支払われていたと考えられているものはなんでしょう?

Q2. 上の説を唱えたことでも知られる、その著書に『博物誌』がある古代ローマの博物学者は誰?

Q3. 塩の化学式は何?

Q4. 日本の味噌のもととなった、獣肉や魚肉をすり潰し、麹や酒、塩とともに発酵させた調味料を何という?

答えはぜひ、もう一度この記事を読んでみてくださいね。

参考文献

『入社1年目の教科書』,岩瀬大輔,p.114,ダイアモンド社

塩の正体:塩の性質,たばこと塩の博物館,https://www.jti.co.jp/Culture/museum/collection/salt/s1/index.html

1 世界最古の文献,Salt and Health,http://www.music-tel.com/naosuke/nao-h/salt01saiko3-3-6.html

「塩」は海水から作るのに、どうして「土へん」が付いているのですか?,漢字文化資料館,https://kanjibunka.com/kanji-faq/mean/q0494/

味噌の起源,味噌蔵,https://www.hanamaruki.co.jp/misogura/history/roots-of-miso/