金融ITのクラウド化について概説してみる③変革篇
2019-06-06
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皆さん、こんにちは。金融ITに関する本投稿も第3回を迎えました。

(次回「金融ITのクラウド化について概説してみる④現代篇」リンク)

さて、前回前々回の2回にわたり金融(というか銀行)のITの歴史と直近の課題について書いてきました。そこで、銀行システムの課題は「古く巨大な基幹システムと、現代のユーザが求めるUXとのギャップ」であると申し上げました。

ここで日銀の金融高度化センターが主催するITを活用した金融の高度化に関するワークショップ 、その第1期1回の要点を引用したいと思います。

① かつて先進的であった日本の金融機関の勘定系システムについては、その 精緻な仕組みを維持したまま、大型化・複雑化した結果、維持コストが増加 し、戦略的なシステム開発が行いにくい状況に陥っているとの見解が示され た。また、日本の金融機関では、ITベンダーへの依存度が高いことが、IT人 材の不足に繋がっているとの見解も示された。
② 今後の金融 ITの活用においては、従来の勘定系システムへの変更を最小限 にしたうえで、新分野のシステムをオープン系で構築することが望ましいと の提案があった。
③ 決済の 24 時間 365 日サービスについて、英国等海外の先進事例が紹介された。日本における導入については、金融機関毎や顧客セグメント毎に対応を 選択できる形を支持する意見が多く聞かれた。

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/data/rel141111a1.pdf

こういった地合いを受け、金融庁傘下の団体であり、金融システムに関する事実上のガイドラインを制定するFISCからも新規的なメッセージが発表されています。FISC安全対策基準第9版(2018年3月発表)では、その前書きにいきなりクラウドやFintechといった文言が登場するなどこれまでになく先端動向に対しポジティブな反応を示しています。

さて、事実上金融業界でもクラウドを利用することが認められたわけですが、そもそもクラウドのメリットとは何でしょうか。また、それが金融ITに何をもたらすのでしょうか。下記に米NISTによるパブリッククラウドの定義を引用します。

1. オンデマンド・ セルフサービス (On-demand self-service)

2. 幅広いネットワークアクセス (Broad network access)

3. リソースの共用 (Resource pooling)

4. スピーディな拡張性 (Rapid elasticity)

5. サービスが 計測可能であること (Measured Service)

https://www.ipa.go.jp/files/000025366.pdf

とあり、簡単に言ってしまうとサーバ本体を買わずともリソースが調達でき、かつそれらはネットワーク越しに管理が可能、と言えます。金融向けに特に有効と思われる特徴としては
●データセンターを分散させられ、DR(災害対策)が容易
●インフラ構築、運用負荷が低減でき、ベンダ依存度を一部減らすことができる
●APIによるシステム間接続がしやすい
などが挙げられます。

これらの特性をうまく使いこなし、近年では多くの事例が生まれました。次回はそれら事例の簡単なご紹介と、一方で消えないクラウドに対する誤解について触れたいと思います。

お読みいただきありがとうございました。