ミンツバーグに学ぶ ~ マネージャーのあり方の陥りがちな誤解

マネジメント論のお話しです。
Tech Blogの本題でないですが、働き方やキャリア形成が多様となり、年功序列制や終身雇用に代表される従来の組織形態が 崩れてくるなかで、マネジメントは非常に難しいテーマの一つになっています。
組織やマネジメントに関する情報は書籍やインターネットで豊富にあり、手軽に情報が得られる一方で、マネージャーはどうあるべきかについては、やっぱり良くわからない、と日々悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

今回は、マネージャーのあり方を考える指針の一つとして、ミンツバーグの考え方を紹介したいと思います。

マネージャーのイメージ

はじめに、皆さんは理想的なマネージャー像について、どのようなイメージを持つでしょうか。

優れたマネージャーは、雑音に紛らわされることなく、抜かりなく仕事をコントロールし、大所高所からオーケストラの指揮者のごとく美しくタクトを振る、といったイメージを想い浮かべるかもしれません。

ひと昔前のマネージャーは、それが一つの理想像だったかもしれません。
マネジメントの発明者ともいわれるピーター・ドラッカーも、『現代の経営』(1954年の著書)でこのように述べています。

「(マネージャーは)オーケストラの指揮者に似ていると言われることがある。一つひとつの楽器の音は、それだけではただの雑音にすぎないが、指揮者の努力とビジョンとリーダーシップを通じてはじめて、一つのまとまった音楽として命を吹き込まれる。」

これに対し、マネジメントの大家であるヘンリー・ミンツバーグは、著書『マネジャーの実像』で、このように記載しています。
「マネジャーの仕事にオーケストラの指揮者と似たところがあるとすれば、(中略)全員が理想どおりに行動するコンサート本番の勇壮な指揮者の姿ではない。ありとあらゆる不都合が立て続けに持ち上がり、そのたびに迅速に修正しなければならないリハーサルのときの姿だ。」
(※「マネジャー」の表記は原文を踏襲しています)

マネージャーは、膨大な量の頼みごとに忙殺されるのが常であるとし、通常のマネージャーと異なり、優れたマネージャーは、数々の制約を受けながらも、新しい義務をつくり出したり、既存の義務をうまく利用したりすることで、状況をコントロールしている、としています。

マネージャーは現場業務に入り込むべきではないといった論調を見かけることもありますが、ミンツバーグは自ら行動することも状況に応じ必要だと主張しています。

マネージャーが果たすべき3つの次元のマネジメント

マネージャーが自身の役割を果たすべくマネジメントは、次の 3つの次元で行われると定義しています。

  • 情報の次元
  • 人間の次元
  • 行動の次元

それぞれエッセンスのみ紹介します。

情報の次元とは、戦略・組織・システム(機構という意味でのシステム)の設計や、資源の分配などを通じ組織をコントロールすることを主に指します。
これはマネジメントの仕事として最もイメージしやすいものだと思います。

人間の次元は、少しわかり辛いかもしれませんが、指示によって人を動かすことではなく、本人が自発性を発揮するように促すこと全般を指します。
組織の緩衝装置になったり、人的ネットワークの構築を通じてスムーズに仕事が流れるようにすることも含め、上意下達の意思決定・指示以外で、仕事に打ち込める環境を作りだすことが人間の次元のマネジメントです。

行動の次元は、組織の任務を成し遂げるための活動にマネージャーがじきじきに携わることです。
トラブルが発生した時に先頭に立って上手に対処することはもとより、課題を解決するために必要な行動を自ら取っていくことも含まれます。

マネージャー業務の問題は何か

ミンツバーグは、マネージャーは、「砂時計の細い「首」の部分のようにはさまれていて」、マネジメントとは、「さまざまな場所に張り渡してあるさまざまなロープの上を歩く、多次元の綱渡り」と表現しています。

ああ、自分もそうだよな、いつも首が締まっているし、綱渡りの毎日だよな、と思われる方も多いことでしょう。

ただ、それは今のマネジメントでは当然であり、それ自体は問題ではないのです。
理路整然と部下がお膳立てした資料・報告に対し指示することが望ましい姿では全くなく、3つの次元を状況に応じ使い分け差配し、制約は当然視したうえで、そうした義務を最大限利して、自らの職務の成果を最大化していくことが、実際的であり、望ましい姿だとしています。

今の不確実性が高く多様性に富む組織・仕事環境においては、時間に追われていること、課題が山積することはある種前提だと捉える。そのうえで、一つ一つ直面した事象に対して、手持ちの義務や情報、人を活かして、自ら現場業務に入って行動し、そうした活動を通じて真の課題を解決し、いかに 組織を変化させていくことができるかが、マネージャーが向き合うべき問題と言い換えることができるでしょう。

必要な情報があがってこない、思うようにチームが動かないのは、人間の次元、行動の次元のマネジメントが不足しているかもしれません。
行動はしているが良い方向に行かないのは、制約を活かせず流されるままであったり、課題を変化の端緒として新しいシステムとしていく視点が不足しているかもしれません。

自身の仕事のあり方を見直すヒントになれば幸いです。

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