「インターナル」と「インターナショナル」って似てるよなぁと思いながら今回も社内の海外人材との関係作りについて記事を書いていこうと思います、マーケティングチームの奥山です。
前回、グローバルチームの働き方の注意点についての記事で予告したとおり、「内部顧客」とは何か、そして内部顧客満足度を上げるインターナルコミュニケーションとは何かについてこの記事で解説していきます。
で、内部顧客って?
顧客というのはそもそも「外部顧客」と「内部顧客」の2種類に分かれます。
通常ビジネスで指す「顧客」とは外部顧客のことで、サービスや商品を提供する相手、クライアントです。そして「内部顧客」とはステークホルダーのこと。インターナルマーケティングでは特に社員のことを主に指します。
(え? 社員が顧客? と聞き返す方がいれば、その人の机に一生頷き続ける赤べこを置いていくのでお知らせください)
会社にとって従業員はもっともマーケティングの影響を受ける極めて重要な顧客です。インターナルマーケティングがうまくいかなければ従業員の満足度は下がり、生産性などに影響します。そして積もり積もった不満は外部顧客へのサービス低下、もしくは社員の定着率の低下へと繋がります。
顧客離れが悪化した場合、新規顧客開拓(内部・外部両方とも)のコストは計り知れません。そこで悪循環の大元である内部顧客の満足度を上げるインターナルマーケティングが必要となってくるのです。
インターナルマーケティングって何すればいいの?
インターナルマーケティングの方法は会社が守りたい企業文化によって変わってきます。IT業界では主に「自由さ・自分らしさ」を大事にしている雰囲気がありますね。
Googleの場合は「自由な発想」を大事にしているため、会社の施設にスポーツの場や音楽などの趣味を楽しむ場を設けたりして、社員に自由を楽しむ環境を提供しています。また「社員同士のコミュニケーション」も重要視しているので、定期的にピクニックなどを企画したり、食堂で無料のご飯を提供したりしています。CEOが全社ミーティングなどでカジュアルに社員の生の声を聞く場を持つというのもいいインターナルマーケティングの例ですね。特に有名な「20%ルール(業務時間の20%を担当業務以外に費やしてよいというルール)」も、社内制度としてインターナルマーケティングの一部です。
日本マイクロソフトが最近話題になっているのは「週休3日制」と「会議時間を30分以下にする」というルールですね。「ワークスタイルチョイス」というマイクロソフトの企業理念を基に、仕事と生活のバランスを自分で選択させることで、社員に自由と余裕を与えています。
(当社で『自由』を感じるのは社員の服装などでしょうか。赤やオレンジ色の頭がちょこちょこ見えては、「お、頭が紅葉したな、秋か……」などと感じる日々です)
チームビルディングや社内ルールはすべてインターナルマーケティングにつながります。言い換えれば、企業理念をどのように社員にマーケティングして体感してもらうか、「満足できる仕事」というサービスを提供するかが肝です。
海外人材に対して社内コミュニケーションで気をつけることは?
グローバルチームは基本的に様々な文化が混ざっているチームなので、メインストリームに対して行うインターナルマーケティングで取り残されてしまうことが多々あります。その場合、孤立感からマジョリティとの壁が厚くなり、社内コミュニケーションがうまく成り立たなくなるリスクが上がるので、小さなことにも注意を払う必要があります。
例1:言語の壁
グローバルチームで一番大きな問題は言語の壁です。日本語がわからない社員がいる場合、コミュニケーションが取れるよう教育制度を用意しているところが多いと思いますが、教育は時間もコストもかかります。最低限行わなければならないのは、日本語ができなくても会社の全体としての動きと自分の担当する業務を追えるようにコミュニケーションをサポートすることです。
FIXERの全社ミーティングでは、発表者は英語での説明が入った資料を作成しますし、Slack上では日本語と英語がわかる社員が話をリアルタイム翻訳して共有しています。
またHRに英語と日本語の両方を話せるメンバーがいるのでもっと細やかなサポートが必要な場合にも安心です。
例2:食べ物
日本で暮らしていると案外気づかないものですが、文化や習慣で食べられないものがある海外人材は多いですね。
例えばムスリム教の社員は豚肉やアルコールが摂取できません。ゼラチンや乳化剤などにも豚の成分が入っていないか調べますし、バニラエッセンスにアルコールが使われている場合もあります。
当社には牛肉が食べられない宗教の社員もいますし、ベジタリアンの社員もいます。社員同士の飲み会などはベジタリアンメニューを数点用意しておかないと、彼らの食べられるものがなくなってしまいますので、この辺りには特に気をつけています。
例3:ほめ方や注意の仕方
日本の職場でよく起きる海外人材とのトラブルとして、「大人数の前での叱責」があります。中国やアメリカなど、人前で叱られることに激しい抵抗感を持つ文化では、叱責をする場合個人を呼び出して1対1での話し合いを行います。人前で叱責するとモチベーションを下げるだけではなく、強いネガティブ感情を生み出してしまうので避けたほうがいいでしょう。
逆にほめる時は当たり前ですが人前でほめるほうが満足度が高くなります。組織としての評価につながっていると実感できるようシステム作りをするのもインターナルマーケティングです。例えば海外では「今月の従業員No.1」などがオフィスの壁に貼ってあったり、全社ミーティングで大々的に賞賛されたりします。その社員個人の満足度を上げるだけでなく、社内の雰囲気を盛り上げたり、コミュニケーションのきっかけになったりするので、社内の評価制度はしっかり作りこんでいる会社が多いです。
このように、些細なことが違う文化では大事に取られることは多いので、新しい文化の社員が入ってきた時には大まかな風習を調べてみるのがいいかもしれません。当たり前のように思えて、案外難しいのがインターナルマーケティング、そして異文化コミュニケーションです。「これくらいのことで……?」と慌てないよう、日々の観察が大事ですね。