山田先生のコーチングコラム: 第1回 「モノ」に囚われない思考
2020-06-08
azblob://2022/11/11/eyecatch/2020-06-09-way-of-thinking-for-stage-up-01-000.jpg

FIXERにマネージャー向けコーチングを行って頂いているFlora Partnersの山田先生による、企業変革への示唆がある、個人の成長に役立つコラムをお届けします。前回の記事はこちら。お楽しみ下さい!


こんにちは。山田亨(やまだとおる)です。

数年前から、とある格式の高いリーダー養成機関に関わっています。数年前、そこの関係者向け講演会でシリコンバレーで活動する日本人投資家のお話をお聞きする機会がありました。

投資家氏曰く、「中国では、車って「ログイン」するものなんですよ。」とのこと。当時、車は個人が所有するモノであると思っていた僕は、「へぇ~」と思ったことを覚えています。

車っていうのは、単なる個人の持ち物、さらには、単なる「乗り物」や「移動手段」という従来の概念を超えて「コネクテッドされ、シェアされるものだ」という概念が形づくられているということを初めて体感した瞬間でした。

さて、こういうことを仕掛ける側といいますか、「視点の高い人」は物事を単なる「モノ」や「コト」ではなく、「(社会的な)概念」としてみています。それが、目の前にある「物質」であったとしてもです。

もう皆さんには釈迦に説法ですが、~as a service として語られるものはモノを「概念」として捉えることで成り立っていますよね。「モノ」を「モノ」としてみて、たゆまぬ努力で品質を向上させてしまう我が国特有のクラフトマンシップ思考は、as a serviceの世界では足枷になっていきます。

物事を概念として捉えるというのは、それを見る抽象度を上げるということです。

例えば目の前にペットボトルの「水」があるとします。それを単に「水」としてみるのか?それともそこに別の概念を見いだすのか?個々が本当に大きな違い。見える景色が変わってきます。

例えば、あなたの目の前にあるペットボトルのラベルに「エビアン」とか「いろはす」という文字が見えたら、ブランドやマーケティングの事を考えられるし、ペットボトルの「分厚さ」に着目したら環境問題や廃プラのことが考えられます。

あるいは、水源地に着目したら、その土地の産業とか、外国人による水源の買い占めなどの社会情勢にも思考を飛ばすことができます。

そして、これらはすべて関わり合って、更に大きな社会のシステムのなかに組み込まれています。

なんの変哲もない物質としての「水」であってもこのように、いろんな視点で見てみることで、単なる物質的な「水」ではなく、社会的に様々に意味づけられた「概念」として認知することができます。

私たちの思考は、どうしても目の前にある「モノ」に囚われてしまいます。

でも、そこを一歩我慢して「それって、そもそもなんだったっけ?」とさらに思考を抽象化する習慣をつけることで、頭はかなり自由に思考できるようになります。

例えば、お客さんが「モノ」レベルで問題意識を持っているとき、それを取り巻く情勢なども考えながら、一旦概念化、問題を再定義するような対話ができると効果的です。

「モノ」レベルではなく「概念」レベルでソリューションを握れると、お客様の課題を再定義できますし、抽象度の高い概念レベルで握れると、具体的な物事の展開は比較的自由になってきます。

そうなれば、こちら主導で話を進められる可能性も高まりますよね。モノを物質としてとらえるのではなく概念として捉える訓練。具体的には「それって、そもそもどういうことだっけ」という質問。

是非鍛錬してみてくださいね。