山田先生のコーチングコラム: 第5回 こんな時だからこそ、のお話
2020-06-30
azblob://2022/11/11/eyecatch/2020-06-30-way-of-thinking-for-stage-up-05-000.jpg

FIXERにマネージャー向けコーチングを行って頂いているFlora Partnersの山田先生による、企業変革への示唆がある、個人の成長に役立つコラムをお届けします。前回の記事はこちら。お楽しみ下さい!


こんにちは。山田亨(やまだとおる)です。

私からの文章をお届け始めた頃と世の中の景色はずいぶん変わりました。

日々、いろいろな会社のリーダーとお話をさせていただいていますが、「テレワーク」については悲喜こもごもです。

これまで着々と準備を進めてきた会社は、それほどの混乱もなく、着実に進めていらっしゃいますし、これまであまり深く考えていなかった会社は、業務プロセス自体がテレワークに対応していないため、なかなかの混乱を呈しているようです。

業界により風当たりの強さは異なりますが、たとえ同じ業界であったとしても、この嵐が去ったときに、この状況に適応して一気に抜け出している会社と適応できずに生産性を下げて失速する会社が鮮明に分かれているだろうなぁ、というのは強く感じられます。

さて、今日は「こんな時だからこそ」のお話です。

このような非常時には良い意味でも悪い意味でも人は興奮しますし、知らず知らずのうちに感情に振り回されてしまいます。

そんなときにどういう心持ちで過ごせば良いか、ぜひ「3つのC」という観点を意識してみてください。

この場合の3つのCとは

Courage(勇気)

Compassion(思いやり)

Community(社会的つながり)

です。

以下、私自身の経験も踏まえながら説明します。

1.Courage(勇気)

若い人の死亡率は低いとはいえ、感染すれば社会的な影響も大きい今回のvirus。

私の地元の鎌倉でも友人がやっている飲食点は非常に厳しい状況に置かれていますが、このような「直接的な脅威」にさらされていなかったとしても日々、不安を煽る報道も多い中、知らず知らずのうちに私たちの心は動揺しています。

プロ野球や高校野球の投手がマウンドで動揺してしまっている場面をよく見ますが人は自分の心が動揺していることに反応してさらに動揺してしまいます。悪循環。

このような状況では、まずは「自分が動揺している」ということをしっかりと自覚すること。その上で、深い深呼吸をして心を落ち着かせることが必要です。

項目タイトルは「勇気」ですが、ここでお伝えしたい「勇気」とは、厳しい状況の中を猛々しくマッチョに突き進む「蛮勇」ではなく、静かに自分の心の中の動きを見つめる勇気。

世の中全体が動揺している中、知らず知らずのうちにそこに影響され、ただ普通にしているだけでも、様々な不安や他者への怒り、そのほか、ダークな感情が渦巻きます。

ある会社ではテレワークのチャット、かなり荒れているという報告も聞きます。

ここで大事なことは、それを垂れ流しにするのではなく、自分の心の中にそのような感情があることを見つめて、必要であれば、それを治めるために誰かに助けを求めること。

本当の勇気とは、恐怖がないことではない、恐怖の中を歩くことである。恐れや不安を感じることは人間として当たり前のこと。自分が感じている恐れや不安を隠してしまうと、それがねじれて、ますます周囲との関係で摩擦を起こしてしまいます。 まわりが揺れているときこそ、静かに自分の心を見つめる勇気を持ちましょう。

2.Compassion(思いやり)

思いやりの方向性としては

・他者に対する思いやり と

・自分に対する思いやり の二種類があります。

この状況、前者の「他者に対する思いやり」はもうみなさんしっかりともたれていますよね。

(大丈夫ですか?) 

他者の置かれている状況に思いをはせたり、ちょっとした変化を感じ取って声をかけたり。「思いやり」があるだけで、人は大きな勇気をもらうことが出来ます。

そして、こうした状況でさらに意識する必要があるのは後者。

様々な制限が課されてくる状況ですので、仕事も人間関係も、思い通りに進まないことも多いです。

強豪高校野球チームのメンタルコーチをしている大先輩に聞いたことがありますが、ピンチになって崩れる投手は、自分を責める傾向が強いそうです。

それとは逆に、ピンチでも、「マウンドを死守しようと頑張っている自分は、良い投手に成長してきたな」などと自分を褒める投手は、粘り強く投球を続け、最少失点でピンチを切り抜けるそうです。

苦しいときこそ、自分を責めず「よく頑張っているな」と自分に応援エールを送り続けていただきたいです。

その上で、業務上必要なフィードバックとアドバイスを受け、目的の成就に向け、行動を修正していく。自分を卑下することなく、周囲の力を借りて、この荒波を乗り切っていきましょう。

蛇足ですが、セルフ・コンパッションは「自分に甘い」ということではありません。

自分に甘い人は、苦境になると、自分の責任を放り投げて逃げ出します。セルフ・コンパッションは、苦しい状況下で、その状況に耐え抜いている自分へ思いやりを示し、

最後まで頑張ろうとする心理ですので、決して「自分を甘やかす」ということではありません。

セルフ・コンパッションがある人は、ご自身も辛い気持ちをよく味わっていますので、

他人に対しても思いやりを示すことが出来ます。

そして、他人に対して思いやりに満ちたサポートをして、感謝を受け取ることが最も効果的なストレス対処法だったりもします。

最後に、アメリカの作家のマークトゥエインの言葉を。

「自分を励ます一番の方法は、他の誰かを励ますことさ」

では、次。

3.Community(社会的つながり)

臨床心理学者の河合隼雄氏は、その著書の中で以下のように述べています。

・そもそも人間は誰かに依存せずに生きてゆくことなど出来ないのだ。

・自立ということは、依存を排除することではなく、必要な依存を受け入れ、自分がどれほど依存しているかを自覚し、感謝していることではなかろうか。

「1.勇気」の段でも述べましたが、このような困難な時期だからこそ、孤立を避け、様々な通信手段を使って「苦しさ」「息苦しさ」「閉塞感」などの感情を共有していただきたいです。

「自分だけが苦しい思いをしているのではない」という意識はセルフ・コンパッションを強化することに役立ちます。

また「苦しい」という直接的なネガティブ感情に関してだけではなく、日常のコミュニケーションでも「社会的なつながり」を意識していただくことで生産性が上がります。

最近は、私たちコーチ業界の人間が集まってプロジェクトの打合せや勉強会を行う際にも、「今、どこにいる?」という対話から、いつも以上に丁寧に場を整えてスタートします。

もちろん、この「どこにいる?」は「物理的な場所」を確認するのではなく、1.で述べたような「心理的な状態」について共有することで深い呼吸で打合せが出来るように意図するものです。

まぁ、コーチという人種はみんな内省好き、という事情もありますが(笑)

皆様も、業務の打合せであっても、打合せごとに「一旦繋がる」というプロセスを意識していただくだけで、仕事の生産性はずいぶん上がるのではないかと思っています。

以上、長くなりましたが、皆様の参考になれば幸いです。