山田先生のコーチングコラム: 第9回 明治のサムライの刀
2020-08-11
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FIXERにマネージャー向けコーチングを行って頂いているFlora Partnersの山田先生による、企業変革への示唆がある、個人の成長に役立つコラムをお届けします。前回の記事はこちら。お楽しみ下さい!


こんにちは。山田亨(やまだとおる)です。

前回の記事では、研修講師のオンライン化対応を例として、「その本質は何か?」という話を考えていきました。今回のように周囲の環境が大きく変わるとき、「課題の捉え方」について1つ大事な考え方があります。

本題に入る前に、こうした環境変化って歴史を見ると私たちは何度も体験しています。例えば、江戸時代の末期、黒船によって開国した日本では、武力の源泉も「刀」ではなく「銃」になっていきます。この時代にやるべき事は刀剣の技術を磨くのではなく、銃を調達し、その扱いに習熟することでした。

別の例をあげると、我が国の産業を牽引する自動車の業界の話は、生産プロセスを磨き上げることで確固たる地位を築いてきました。でも、その動力が「ガソリン」から「電気」になったとき、我が国の自動車会社が磨いてきた内燃機関の技術は、明治のサムライが磨き上げる刀となってしまうでしょう。さらには、車が個人の所有物を超えて「移動手段」となることで、競争のフィールドも、「もの」ではなく「システム」へと移っているのは皆様ご承知のとおりです。

もう一つ、全く別の観点から例を挙げてみます。私の仕事の領域ですが「マネジメント」の話。

プレーヤーからマネージャーに出世をする理由は、プレーヤーとして結果を出してきたからですが、マネージャーに昇進したプレーヤーはしばしばマネジメントとして機能しません。なぜならば、その優秀さが故に、全部自分でやろうとしてしまうから。

マネジメントの仕事は「他者を通じて結果を出すこと」なのですが、そこが理解できていない(かつて優秀なプレイヤーだった)新任マネージャーはマネジメントに苦労します。


以上、3つ例を挙げましたが、共通点は何でしょう?

それは、「外的環境に合わせて、考え方を変える必要がある」ということです。

・明治のサムライは、戦いのルールが変わったこと

・我が国の自動車会社は、「くるま」の定義が変わったこと

・新任マネージャーは、「求められる役割」が変わったこと

この変化に対応するために、これまでの考え方の延長線上での努力を続けるのではなくそもそもの考え方、世界の捉え方自体を変えていく必要があります。

こうした問題のことを「適応を要する課題」(Adaptive Challenge)といいます。

対となる言葉は「技術的な課題」(Technical Problems)です。

例えそれが困難な問題であっても、従来のパラダイムで突き詰めたり、習熟したりすることで解決できる課題が「技術的な課題」。僕たちニホン人が得意な分野です。

一方、考え方自体を根本から変えていかなければならない課題が「適応を要する課題」。上にあげたような例もそうですし、最近では環境問題なども人類にとってはAdaptive Challengeです。

この二種類の課題を定義した、ハーバード大学ケネディスクールのロナルド・ハイフェッツ教授はこう言います。

「リーダーが犯す最も大きな過ちは適応を要する課題を解決したい時に技術的手段を用いてしまうことだ」


まぁ、まさにごもっともな指摘でありまして、私の仕事は(主に人に関する側面ではありますが)人や組織が自らのAdaptiveなChallengeに正対することを支援することです。皆様はクライアント企業のどんな課題を支援していますか?

Technical Problemsでしょうか?

それともAdaptive Challengeでしょうか?

あ、企業理念に「Technology to FIX your challenges.」って書いてありますね。

それでは、また。