FIXERにマネージャー向けコーチングを行って頂いているFlora Partnersの山田先生による、企業変革への示唆がある、個人の成長に役立つコラムをお届けします。前回の記事はこちら。お楽しみ下さい!
こんにちは。山田亨(やまだとおる)です。
以前、とある企業の法務責任者がこんなことを仰っていました。
「みんな売上とか利益とか経済の事ばっかり考えるんだけど、もっと法律とか規制への意識を高めて欲しいと思うんだよね。」
色々とお話をお聞かせいただきましたが、この方の視点には私も賛同するところが多くありました。今日は法律とか規制についてのお話です。
でも「法律とか規制への意識を高めて欲しい」といっても、コンプライアンス(法令遵守)のお話ではありません。(それは最低限の話であり、できてない企業はレッドカードで一発退場です)。話はもっと奥深くて「法律」や「規制」は経済の上位概念である、というお話。
ここ数年、より複雑化する世界において効果的なリーダーシップ開発サービスをご提供するため、欧米エスタブリッシュメント階級の帝王学である「西洋哲学」の学習と研究を進めています。
それを通じて見えてくるものも多くあるのですが彼等の考え方の特徴的なところは、まず、ルールを変えようとしてくるところ。
一番わかりやすい例だと(具体的には挙げませんが)国際的なスポーツ協議において様々なルール改正がなされて日本人が不利になっているというお話を聞いたことがあると思います。
日本人選手が新しいルール下で成果を残せず、「自分の努力が足りなかった」と一言も言い訳もせずに歯を食いしばって悔しさをこらえているシーンをしばしば見かけます。
ルールを決める密室でどのような力学が働いているのか、私にはうかがい知ることはできませんが、何かで結果を出そうとしたとき、その技量を磨くのはもちろん必要ですが、勝敗を直接的に規定するルールに影響しようという思考が、私たちニホン人に抜け落ちているのはなかなか悔しいところです。
(それは潔しとしないという気持ちはわかりますが…)
違う話に目を向けてみます。
環境問題がますます深刻化する中、世間ではSDGsとかESG投資が盛んに叫ばれ、年金基金などの機関投資家も、投資対象の構成企業を選定する際にはこれらESGのスコアを加味しているようです。
これはとても素晴らしいことではありますし、しっかりとした思想と実行体制のもと、そうした姿勢が広がることはとても良いことです。
一方、これらの動きも、うがった見方をすると、コストで勝てない西欧諸国が「社会問題への対応」という「大義」を掲げてゲームチェンジを仕掛けているという風に見ることができます。
彼等は「ビジネス」を変えるのでは無く、まず「社会」から変えに来る。内側でせっせと頑張るのでは無く、外側から影響する。
冒頭の法務責任者の言葉「経済だけを見るのでは無くて法律や規制を見て欲しい」というのは、そうしたレベルから物事を見て欲しいという話でした。その視点から見ると、見えてくるものも多いです。
もう一つ例を挙げてみます。ある画期的な技術を持つR&D組織。ただし、その技術を実装するには、業界のある規約を改正しなければなりません。
規約の性質にもよりますが、「規約があるからこれは無理だな」と思ってしまうのが一番残念な思考。でも「自分達は技術を開発することだ」という自己限定的な思考に染まってしまっているとそうなります。この場合、規約の改正は誰の仕事でしょうか?
科学的に問題がないことを示して関係者の合意が取れれば規約の改正は可能です。
少なくとも、本当にそれを社会に実装する価値があると考えるならば、研究所が社内の他部署を巻き込んで「自分事」として動きだすことが必要な場面ではないでしょうか。
もはや「技術」は「社会システム」と一体となって機能するものでしょうから。
ルールとは遵守するものなのか、それとも、変えていくものなのか?
真面目な私たちニホン人にとってルールとは遵守するものです。(もちろん、その美徳は災害時に発揮されたりしますが、本当に素晴らしいものです。)でも、このルールに対する感受性の違いが、私たちの競争力を限界づけているような気がしてなりません。
「イノベーション」は社会システムとともにあります。そして皆さんのやっているお仕事は社会を変えていく大きな可能性を秘めているものです。もしかしたら、まだ、皆さんのお仕事は「ルール」にインパクトを与える立ち位置にはいらっしゃらないかもしれません。
それでもなお、「その競争を規定しているルールは何か」を常に意識していることで得られるものは多いです。
ルールに支配されるのでは無く、
ルールを外側から見てメタ認知する習慣、
特にお客様のChallengeを支援し、成就させていくという場面では特に重要なものではないでしょうか。