こんにちは、さとはるです。
ありがたいことに機会を頂きまして、技術書の出版に関わらせていただきました。
大まかな経緯なんかはあおい君が書いた以下の記事をご覧ください。
テックブログ執筆をはじめてたった8ヶ月で書籍出版のオファーがきました。 | cloud.config Tech Blog (cloud-config.jp)
せっかくの貴重な経験なので、自分視点でも何か書いてみようと思います。
文字多めの作文スタイルでいきます。
アイデア出し~初稿執筆
本書は企画段階で「アプリのレシピ本のようなものを作ろう」という目的が決まりました。そのため、共通の入門情報が載っている序盤の数章を除き、基本的に1章1アプリの形になっています。
方針が定まった後は各々「レシピ」を持ち寄ることになりました。自分は「ブログがきっかけでお声を頂いたので、ブログの内容をレシピにしよう」と考えました。最終的に自分が題材に選んだのは以下の2記事です。
Power Automate を用いて書類を自動作成する #PowerPlatformリレー | cloud.config Tech Blog (cloud-config.jp)
それぞれ振り返ってみます。
Power Automate を用いて書類を自動作成する
元々は社内で利用するために作ったPower Automate のツールを記事にしたものです。使った人から「助かった!」という声を頂けたので、ウキウキで記事を書いたのを覚えています。今思うと、自分の中でのPower Platformの成功体験の原初なのかもしれないですね。
さて、この記事を書籍にするにあたり悩んだのはサンプルです。記事の方では「Excelに1行1件まとめられている報告を報告書に出力する」というサンプルになっています。これは社内で使った時のものを抽象化したからこうなったんですが、(1行1件で報告がまとめられてることなんてないだろ……)と思ったため、考え直すことにしました。最初は「青空文庫の中身をまとめたExcel(?!)を各文章毎に出力するフロー」という案を考えました(メタ情報がいくつかあって本文が長い報告書フォーマットに近いものが思いつかなかったんです……)。そんな迷走もありましたが、ゴリさんこと荒井さんにアドバイス頂き「販売の情報をまとめたExcelから請求書を出力するフロー」という実際に使えそうな、イメージしやすいサンプルにすることができました。個人的には本書の中でもトップレベルに実用的な章になったと思っています。
Power Apps と AI Builder を使って最速で OCRアプリを作る!!
「せっかくレシピアプリなんだからバリエーション豊かな方がいいよね。」という話からAI Builderを使ったレシピを出そうと思ってこの記事を題材にしました。この記事自体は本当に「とりあえず使ってみました」といった形の手軽さを主題に置いた記事だったので、書籍の方はほとんど記事とは違う内容になっています。こちらの章は前述の請求書発行レシピの後に考えたので、自然な流れで「請求書を読み取るOCRアプリ」というサンプルに行きつくことができました。
この章で大変だったのは技術検証です。記事の時にはさらっと触っただけだった機能を解説をするわけですから、改めて使い方を理解する必要があります。調べて、サンプルアプリを作って、また調べて……とプロットに起こせるまでにだいぶ苦戦した印象があります。最終的に監修の日本マイクロソフトのエンジニアさんのお力も借りて、なんとか形にすることができました。
OCRというのはただ文字起こしをするだけだったら元の記事のように簡単なんですが、それをシステムとして使おうとすると途端に難易度が上がります。書籍の本章ではその部分について上手いこと解説できたのではないかなぁ(できていたらいいなぁ)と思っています。
初稿の確認
初稿を書き上げてから提出するまでも大事な工程がありました。それぞれが書き上げた初稿を編集さんにお渡しする前に、社内でチェックを行ったのです(所謂校閲)。書籍ではブログ以上に間違いがあってはいけません。特に今回は「レシピ集」なので、レシピ通りにアプリが作れることは十分に確認する必要があると考えました。
そこで、書籍メンバーでお互いに自分が書いた章以外の章を一通り作ってみることにしました。実際に作ってみると、執筆者が「これはわかるだろう」と省いたことや、細かい表現の影響で、次の操作が分からなくなってしまうところが見つかりました。技術的な誤りが無いことを確認するのが主目的でしたが、副次効果でわかりやすさが向上したのは嬉しい誤算でした。
著者校正
技術ブログと技術書籍の執筆で最も違うのは「著者校正」という段階が挟まれることでしょう。著者校正とは、編集さんが作ってくれた「ゲラ(実際の本のフォーマットで文章と図を入れ込んだもの)」を見て誤字・脱字や文章の違和感を取り除いていく作業のことです。今回はメンバーの人数が多かったこともありトンマナをそろえるのも重要な役割でした。
僕たちが初稿を提出したあと、編集さんが本に収まる形に整形して初校ゲラを作ってくださいました。本書は画像の多さが評判なのですが、これでも編集さんが本だいぶ間引いてもらっています。ただ減らしただけでなく、必要な所は残せているのが今の高評価に繋がっているのでしょうし、プロの編集さんの力は凄いですね。
初校ゲラが上がるといよいよ著者校正です。初校ゲラの確認では、編集さんの手によって初稿から圧縮された際に、意味が変わってしまっていないかの確認を行いました。誤字脱字のチェックはオマケ程度で考えていましたが、改めて読んでみると意識してなくてもたくさんの誤字脱字が見つかったのを覚えています。また、校正では見る目や回数を増やすのが大事だと考えていたので、自分とあおい君を中心にダブルチェックの体制を整えました。
初校ゲラを修正すると、編集さんからあっという間に再校ゲラが届きました。ここからはひたすらクオリティアップのために確認作業になります。誤字脱字の確認の他、画像のマスクやトリミング範囲の修正も行いました。再校ゲラを修正するとほどなくして三校ゲラが届き……と入稿ギリギリまで修正を繰り返しました。
この作業は本当に大変でした。何となくで読むと見逃してしまうので、集中して読む必要があります。また、時間を捻出するために書籍以外の業務を巻きで終わらせる必要もありました。期間としては1ヵ月にも満たない短い間でしたが、かなり濃い時間だったなぁと感じます。
入稿!!
本文を入稿し、サポートページを入稿したらあとは待つばかりです。そして……
献本が来ました!!!!!!
書籍執筆を振り返って
今回の書籍執筆は大きな経験になりました。技術的な面では、Power Platformについて今まで以上に深く理解できたと思います。書籍では間違ってはいけないと考えていたので厳密に調べたことと、他の人の原稿を確認する中で新しい知識を取り入れられたことが経験値になりました。文章を書くという面では、編集の方に勉強させて頂きました。細かいテクニックや着眼点等プロの技術を間近で感じることができ、今後にも生かせるような技術を学ばせてもらえました。
書籍執筆は大変ではありましたが、おんなじくらい楽しく、前述の通り良い経験にもなったのでまた機会があればやりたいです。次回作のお声がけ待ってます?!
Microsoft Power Platformローコード開発[活用]入門 ――現場で使える業務アプリのレシピ集 | 株式会社FIXER, 春原 朋幸, 曽我 拓司 |本 | 通販 | Amazon
(おまけ)初稿と初校
最初の原稿、最初の原案のこと。
「初稿(しょこう)」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書
最初の校正。また、その校正刷り。
初校(しょこう)の意味や定義 わかりやすく解説 Weblio辞書
どちらも音としては「しょこう」ですし、出てくるタイミングも近いのですが意味が違うので注意しましょう。
「初稿」は執筆者側が最初に書き上げた原稿のことです。
「初校」は初稿を元に修正(校正)を行う行為、或いは行った結果のアウトプットです。校正刷りしたアウトプットを明示的に差す表現として「初校ゲラ」という言い方をする場合があるようです。
(ちなみに僕は今回の書籍に関わるまで「初校」という単語自体知らなかったです)