AWS Summit Japan 2024で学んだ、企業における生成AIの活用
2024-06-25
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こんにちは、FIXERの稲永です。

今回は、先日参加したAWS Summit Japan 2024についてまとめてみました。


【注意】

本ブログに記載されている内容は、

AWS Summit Japan 2024で発表された内容を元に、

筆者の理解や考察を交えてまとめています。

セッションの内容を正確に伝えることを目的としたものではなく、

発表者の意図や発表内容とは異なる部分があることをご了承ください。


AWS Summit Japanについて

AWS Summit Japan 2024 は、日本最大の AWS クラウドを学ぶイベントで、

2024年6月20日と21日の2日間にわたり、幕張メッセとライブ配信で開催されました。

参加費用は無料であり、

150以上のセッション、250以上の展示ブース、開発者向けのライブステージなどが用意されていました。

オンラインでも100以上のセッションが視聴可能で、

AWS のテクノロジーと活用事例を学ぶ貴重な機会でした。

公式サイトURL : https://aws.amazon.com/jp/summits/japan/

参加したセッション

150以上のセッションが用意されている中、

主に自分が興味を持っている生成AIに関連したセッションを中心に参加してきました。

  • KEY-02「基調講演 ビルダーとテクノロジーが加速する次のイノベーション」
  • CUS-30「生成 AI とヒトの協業によるビジネス革新~ 6 割の業務工数削減と広報 DX を実現~」
  • CUS-37「藤田医科大学の医療 DX の取り組みと AI の活用について」
  • CUS-32「年間 24 億回の推論を実行する AI プロダクトへの生成 AI 実装の挑戦」
  • AP-32「高度なセキュリティのアプリログイン機能を簡単に実現する方法とは」
  • AP‐33「人がいない!膨大なログ・アラート vs 救いの AI セキュリティ」

基調講演 ビルダーとテクノロジーが加速する次のイノベーション

セッション発表者:Amazon Web Services (AWS)

概要:最新テクノロジーやAWSの戦略、日本のお客様との事例紹介


基調講演では、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社の巨勢 泰宏氏より、

2011年に世界で5番目としてリージョンを解説した日本で、

金融機関のSBI証券や自動車業界のTIER IV、通信業界のNTTドコモ、運輸業界のANAをはじめとした、

多岐にわたる業界でイノベーションを実現してきたという、AWSの歩みについて語られました。

次に登壇した、Amazon Web Services Inc.のラフール パサック氏からは、

現代における生成AIの重要性について語りつつ、AWSで実装されている生成AI系のサービスの紹介がありました。

また、Amazon Q Developerを用いた、対話によるコード生成・エラー解決のデモンストレーション映像も流れ、

次世代のコーディングの可能性を感じさせる内容でした。

合間で、東海旅客鉄道株式会社の水津 亨氏より、

リニアの自動運転でAWSを用いたイノベーション事例について、

データドリブン運営の実現を行うためにAWSを活用したことが発表されました。

同様に、株式会社電通デジタルの山本 覚氏からは、

Amazon Bedrockによる公告の生成について発表されました。

生成 AI とヒトの協業によるビジネス革新~ 6 割の業務工数削減と広報 DX を実現~

セッション発表者:共同ピーアール株式会社

概要:独自のクローラーとAmazon Bedrockを活用したニュースリリース文の自動生成


共同ピーアール株式会社の立花 圭亮氏によるセッションでは、

同社の広報/PR業務のオペレーションツール「SAKAE」とインハウス広報DXツール「PR-FORCE」について、

AWSを用いて、生成AIを活用した効率化を実現したことについて発表されました。

広報作成における、”論調の分析”と”リリース作成”の二つの作業について、

生成AIによる最適化を考え、自社内でAIプロジェクトチームを立ち上げることによって、

情報分析では60%(2時間)、プレスリリース作成では33%(3時間)削減できたと報告されました。

※それぞれには人間によるファクトチェックを行い、誤った情報が混ざらないようにしている旨の説明もありました。

生成AIの活用で問題になりやすい、“ハルシネーションの軽減”、“アウトプットの安定化”という課題について、

生成の内容を細分化してキーワードの辞書化を行い、

プロンプトエンジニアリングの工夫(役割の付与、参考データの出力指示、アウトプット形式の明確化)を行うことによって解決に進んでいるそうです。

藤田医科大学の医療 DX の取り組みと AI の活用について

セッション発表者:藤田医科大学

概要:医療DXの取り組みと生成系AIの実証


藤田医科大学の森川富昭氏によるセッションでは、

医療DXの取り組みとAIの活用について詳しく紹介されました。

はじめに、藤田医科大学では150万人の患者データを利用して、

3年前からロボット技術、遠隔医療(遠隔病理)、医療LLMといった医療DXについて取り組んできたことが説明されました。

日本の電子カルテがガラパゴス化していることを問題として、

標準化の遅れ、データの取り出しの困難さ、外部システムとの連携の遅れ、

といったところが問題であることが語られました。

電子カルテの標準化を行う重要性についての説明があった後、

生成AIを用いた医療記録の自動生成システムの開発の説明がありました。

Amazon BedrockでClaude 3を用いて日々の医療記録やサマリを学習させることによって、

医療記録の文章を自動生成し、それに対し医師が追記するようなシステムを構築したとのことです。

プロンプトエンジニアリングとファクトチェックの自動化を行って、

医療記録の作成に医師が10分かけていたのが、1分で済むようになったと報告されました。

今後は、他のサマリも同様にできるように、実際のカルテにもっと近づくように研究を進めているそうです。

年間 24 億回の推論を実行する AI プロダクトへの生成 AI 実装の挑戦

セッション発表者:AI inside 株式会社

概要:生成AIをAI-OCRサービスやAIエージェントに実装した事例


AI inside株式会社の三谷辰秋氏によるセッションでは、生成AIをプロダクトに実装する際の挑戦と成功事例が紹介されました。

同社のAI-OCRサービス「DX Suite」に生成AIを実装することで、

多種多様な非定型書類への対応が可能となり、従来の問題を解決したと発表されました。

今まで、請求書などの書類の種別ごとにモデルの作成を行ってきましたが、

7年で13モデル完成したものの、ロングテール領域(需要は少ないものの広い領域)に対応できずにいました。

これに生成AIを活用することによって、3年間で1000種類以上の非定型プロセットが完成し、コストと時間の削減が実装されたそうです。

さらに、生成AIを利用したプロダクト開発では、

精度、セキュリティ、スループット、コスト運用容易性などの観点から、

基盤モデルを選定し、運用における課題を克服しています。

ノイジーネーバー問題やハルシネーションへの対策も紹介され、

実運用における具体的な課題とその解決策が詳細に説明されました。

高度なセキュリティのアプリログイン機能を簡単に実現する方法とは

セッション発表者:Okta Japan株式会社

概要:Okta CICを使ったアプリケーションへのログイン機能の実装


Okta Japan株式会社の辻義一氏によるセッションでは、

同社の「Okta Customer Identity Cloud(CIC)」を利用した高度なセキュリティのアプリログイン機能が紹介されました。

ユニバーサルログインの実装により、セキュリティの向上とユーザ体験の向上が両立されている点が強調され

特に、CICによる実装がわずか5分たらずで完了するデモが印象的でした。

さらに、漏洩パスワード検知、ボット検知、ブルートフォース攻撃への対応など、

8つ以上のセキュリティ機能が準備されており、

ユーザ起因のアカウント乗っ取りを減らす工夫がされていると説明されました。

また、「Okta Fine Grained Authorization (FGA)」という新しいマネージドサービスも紹介され、

ファイル共有の権限設定などが簡単に行える点が強調されました。

サービスごとのログイン画面ではなく、

ログイン専用のサービスに飛ばして戻す「ユニバーサルログイン」により、

工数削減とセキュリティの向上が実現されています。

人がいない!膨大なログ・アラート vs 救いの AI セキュリティ

セッション発表者:富士ソフト株式会社

概要:新サービス「FujiFastener」のAI活用によるセキュリティ運用の効率化事例


富士ソフト株式会社の北村明彦氏によるセッションでは、

膨大なログやアラートに対するAIセキュリティの活用について紹介されました。

富士ソフトはサイバーセキュリティクラウドと提携し、

新サービス「FujiFastener」を提供しています。

AWSの責任モデル的に、AWSの責任範囲について説明し、

全てがAWSの責任ではないことを説明した後、

特定、防御、検知、対応、復旧の一連のセキュリティ対策を、

AIとセキュリティエンジニアが24時間365日モニタリングする体制を行うことができると説明されました。

特に、AWSネイティブサービスのみを利用することで高コスパを実現し、顧客の環境に合わせやすい点が強調されました。

AIを活用したインシデントの特定や防御、検知、対応、復旧が、

一連の流れとして処理される仕組みが紹介され、

クラウドセキュリティの重要性が再認識されました。

また、マイニング相関の実装が進行中であり、

今後のセキュリティ対策の進化にも期待が寄せられています。

総括

AWS Summit Japan 2024で、生成AIの内容を中心として基調講演を含め6つのセッションに参加しました。

最新のAWSテクノロジーとその実用例を幅広く学ぶことができました。

特に、企業として業務効率化やコスト削減に直結するような事例が多く紹介され、

まだ入社して3カ月になろうとしている自分が考えるのは難しいですが、

今後どのような思考をもたないといけないのか勉強になりました。

私は見ることができませんでしたが、

『2024 Japan AWS Jr. Champions』の授賞式もあったそうで、

FIXERからは2名の先輩が受賞されたこともあり、

AWSの資格に挑戦するモチベーションが上がりました。