
「AIに頼んだけど、なんか違う」。
正直に告白すると、私も最初の頃は「企画書を作って」「告知文を書いて」といった具合に、思いついたままの指示をAIに投げていました。
返ってくる文章は悪くないのですが、どこか的外れだったり、毎回違う方向に振れたり。編集に時間がかかって、結局自分で書き直すことも少なくありませんでした。
原因はAIに対して「指示(いま作ってほしいこと)」しか書かず、「設計(目的・材料・制約・評価・手順)」を渡していなかったのです。
でも、「設計」を足すだけで、漏れ・ブレ・直しが減り、同じ品質を繰り返し出すことが可能となります。
指示と設計は何が違うのか
- 指示=その場の依頼。
- 設計=狙いと基準の枠組み。誰に何を達成させるために、どの情報を根拠に、どんな制約で、どう作って、どう合格判定するかを設定する。
なぜ「AIに頼んだけど、なんか違う」に陥るのか
不足しがちな5要素
- 目的が曖昧:誰に何をさせたいのか不明確
- 材料不足:使ってよい根拠(URL、数値、内部資料)が指定されていない
- 制約不足:長さ、トーン、NG表現、出力形式の指定がない
- 評価なし:何をもって「良い」とするかの合格基準がない
- 手順なし:骨子→レビュー→本文の段取りがなく“一発勝負”になっている
例:住民向けお知らせ:窓口混雑の分散
A) 指示だけのプロンプト
- 指示: 住民向けに、窓口の混雑を避けるよう案内文を書いて。400〜500字。
AIの出力例
現在、窓口が大変混み合っています。
午前中や週明けは特に混雑するため、比較的空いている時間帯のご利用をおすすめします。
手続きの一部はオンラインでも申請できますので、ご活用ください。
やむを得ず来庁される場合は、時間に余裕をもってお越しください。
混雑緩和にご理解とご協力をお願いいたします。
詳細は市ホームページをご確認ください。
見た目は悪くないが足りないもの
- 具体的な行動指示(いつ来ればよいかが曖昧)
- 必須項目(電話番号・受付時間・予約URL)
- テーマの特定(誰のどの手続きを対象にしているか) → 結果として問い合わせが増えやすい、毎回の仕上がりがぶれやすい
B) 設計を足したプロンプト
設計+指示:
骨子(まず出力)
- 目的: マイナンバーカード更新者の来庁を平日14:00–16:30へ誘導し、関連問い合わせを20%減(評価は4週平均で測定)
- 読者: 一般世帯
- 行動指示: 平日午後の来庁、予約推奨
- 必須: 予約URL、電話番号、受付時間、持ち物
- トーン/分量/形式: 敬体、400–500字、見出し2+箇条書き1
- 材料: 市公式ページA/FAQBのみ
- NG: 誇大表現、材料外の情報追加
AIの出力例
【マイナンバーカードの更新は平日14:00–16:30が比較的空いています】
マイナンバーカードの更新は平日午前中と週明けは大変混雑します。
カードの更新・住所変更などは、比較的空いている平日14:00〜16:30の来庁をご検討ください。
待ち時間短縮にご協力をお願いします。
【予約と持ち物】
事前予約: 予約サイト[https://example.city/…](24時間)
電話予約: [0120-XXX-XXX](受付: 平日8:30〜17:15)
持ち物: 本人確認書類、マイナンバーカード 等
体調不良の方は代理申請も可能です。詳細は市公式サイトをご確認ください。
良くなった点
- 行動が具体(平日14:00〜16:30に来てください)
- 必須情報が漏れない(URL・電話・受付時間・持ち物)
- 読み手とテーマが特定(マイナンバー更新者向け)
「指示だけでも賢い」ことと「要件を満たす」は別
- 指示だけでも読みやすい文は出ますが、毎回必須3点(電話・URL・受付時間)を網羅する保証はありません。
- 公開物や問い合わせ誘導では、この抜け漏れがコストになります。だから“設計のひと言”でガードする価値がある、ということです。
設計を少し足すだけで「漏れ・ブレ・直し」が減ります。
結果、速くて安全な運用になります。
文章の出来を“上げる”だけでなく、“毎回同じ水準で出す”ための仕組みになるのがメリットです。
まとめ
「なんか違う」の正体は、設計が欠けたまま“指示だけ”を投げていたことにあります。
まずは最小仕様を書き、骨子→本文の二段階に変えるだけでブレは大きく減り同じ品質を繰り返し出すことが可能となります。
指示を設計に格上げし、実務で再現性を出す。
それにより「AIに頼んだけど、なんか違う」を卒業できます。