「お金」と「スタンド能力」について-日銀広報誌から見るお金と信用の関係とは
2019-06-26
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こんにちは。FIXER Marketing & Salesの竹中です。主に銀行様をはじめとする金融のお客様を担当させて頂いております。
突然で申し訳ありませんが、皆さんは『ジョジョの奇妙な冒険』(以下、ジョジョ)という漫画はお好きでしょうか。私はお好きです。

私がいきなりこんな話を始めたのは、2019年6月25日に発刊された日本銀行の機関広報誌「にちぎん」にこんなコラムが載っていたからです。コラムではジョジョの作者である荒木飛呂彦さんがこんな風に書かれています。

僕の漫画『ジョジョの奇妙な冒険』に「スタンド」という能力が出てくるのだが、それは超能力のような眼には見えないけれど「存在している力(パワー)」を、具体的に目に見える形あるものとして、絵で描いている。
~中略~ お金には「コインと紙幣」があり、それは物と物との交換を数字に置き換えることで便利にするために生まれたのだから、この「コインと紙幣」の姿こそ既に「スタンド」の概念といってよい形だ。絵に描けるッ!

「にちぎん」No.58 2019年夏号

なるほど、お金の本質は価値の交換のための信用であり、それを形づくるのがコインであり紙幣であるということですね。ジョジョ本編でも大事な舞台装置としてコインはしばしば登場していて、例えば3部でJ・ガイルを倒すために使ったり、4部で重ちーのハーヴェストが集めていたり。お金の生み出す価値がいかに人の心を揺さぶるか、ということでしょう。

さて、お金の本質が価値の担保であるならば、お金そのものは別に金属や紙のカタチを取る必要もないと言えそうです。

近代までの世界において、唯一最大の「価値の保証人」とは誰でしょうか。答えは簡単で「国家」です。特にいわゆる大国、先進国です。なので今でも世界の基軸通貨は米国のDollarということですね。

こうしたお金の在り方に一石を投じたのが国家に匹敵する信用と普及力を持った仮想通貨で、最近特に話題になったのがFacebookの発表したLibraです。BTCなどと違って完全な分散台帳ではなくLibraファウンデーションが中央にいる形式にはなりますが、GAFAの信用力とテクノロジーで十分に通貨と呼ぶに足る価値の担保が可能になるということだと思います(その証拠に、色々なところでLibraに対する反発も出ている)。一方で、既に個人情報や個人間のネットワークなどの貴重な情報を独占するプラットフォーマーがこれ以上データを握ることに対する危機感を持つこともある意味当然と言えるでしょう。シャドーバンキングの呼び水となってしまうかもしれません。

余談ですがLibraとは古代ローマ発祥の質量・通貨の単位であるそうで、更にこの語源はラテン語で「天秤」を意味するそうです。タロットで天秤といえば剣と天秤とを両手に持つ女神の図柄で、大アルカナ11番目のカード「正義」です。
ジョジョではエンヤ婆ですね(冒頭のJ・ガイルのくだりとつながった)。

お読みいただきディ・モールト・グラッツェ(ありがとうございました)。