
1. はじめに
初めまして。2025年FIXER新入社員の大西 直柔(おおにし なおなり)です。
大学では、失明患者の視覚を回復することを目的とした"視覚補綴システム"に関わる研究をしていました。
本稿ではTech Blog研修として、視覚障がい者に向けた視覚補助デバイスについて、簡単ではありますがまとめました。
2. 視覚経路について
始めに前提として、人間の視覚経路について簡単に述べます。
人は何かを見た際、眼球の奥にある"網膜"に光が入ります。網膜は光を元に電気信号を作り、それを視神経を経由して脳内の"視覚野"と呼ばれる領域に送ります(厳密には"外側膝状体"と呼ばれる領域を経由していますが、ここでは省きます)。視覚野で電気信号が処理されることで、人は外界の様子を見ることができます。
したがって、外傷や疾患等により、これら視覚経路のうちどこかが正常に働かなくなると、視覚野が電気信号を受け取ることができなくなり、失明または重度の視覚障がいに陥ります。

画像引用:視覚のメカニズム――眼|感じる・考える(3) | 看護roo![カンゴルー]
3. 現在存在する視覚補助デバイスの例
2.で示した通り、視覚経路の損傷は視覚障がいを引き起こします。そこで、失われた視覚経路の機能を補い、視覚障がい者の視覚を補うための様々な研究やデバイス開発が行われています。
以下に代表的な研究内容や視覚補助デバイスについて述べます。なお、調査においてはGaiXer(FIXERの生成AIサービス)を使用しました。
3-1. Argus Ⅱ

カメラ内蔵サングラスと、眼球に設置する刺激用電極と受信装置からなる、網膜刺激型視覚補綴システム。
カメラの映像をもとに、刺激電極で網膜に電気刺激を与えることで、低解像ながら視覚を再現することができる。
網膜色素変性症(網膜内の視細胞が劣化し光を感じることが出来なくなる遺伝性の疾患)など、網膜上で電気信号が作れなくなった視覚障がい者に有効である。
参考:Argus II:視力を回復させるバイオニックアイ | 知財図鑑
3-2. RV-001

慶応義塾大学と名古屋工業大学の共同研究グループが発表した、「光遺伝学」に基づく研究成果をもとに、スタートアップ企業「レストアビジョン」が開発した視覚再生治療製剤。
これを使用することで、機能を失った視細胞に代わり、本来は情報処理を担う"双極細胞"が光を受容することが出来るようになり、本来の視覚を取り戻すことが出来る。
3.1.と同じく、網膜色素変性症患者に向けた技術である。
参考:光遺伝学を活用し、目の難病の視覚再生目指す 慶大など国内初の治験を開始 | Science Portal - 科学技術の最新情報サイト「サイエンスポータル」
3-3. 脳刺激型視覚補綴システム
3-1., 3-2.は、視神経以降に損傷を持つ視覚障がい者には適用することが出来ない。一方で、こちらは脳内の視覚野に直接電気刺激を与えることにより、より多くの視覚障がい者に適用することが出来る。
また、視覚野は網膜と比較して電極を埋植できる面積が広いことから、より解像度の高い視覚の再現が可能であることが考えられる。
私が大学で所属していた研究室で研究されていた視覚補綴システムはこれです。
参考:脳に映像を直接送る「安全な脳インプラント」が開発される - ナゾロジー
3-4. スマートグラス「SolidddVision」

こちらはこれまでとは毛色が異なり、見えづらさを改善するデバイスである。
これは、黄斑変性症(網膜の中央部が変性し、視界の中央が見えづらくなる)患者に向けた、カメラとディスプレイを内蔵したメガネであり、装用者の目の動きを検知し、網膜の健常な部分に向けて映像を投影することで、立体視を含む正常な視覚を提供することが出来る。
参考:新たな技術で黄斑変性による見えづらさをサポートしてくれるスマートグラス「SolidddVision」 | メノコト byわかさ生活
まとめ
視覚は人の五感の約8割を担う重要な物であり、それを損なう視覚障がいは、人のQOLを大幅に低下させると言えます。
一方で、そのような視覚障がい者の視覚を回復するべく、様々な研究が世界中で行われているようです。