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金融ITのクラウド化について概説してみる⑤キャズム篇

金融ITのクラウド化について概説してみる⑤キャズム篇 2019-06-19Leave a comment

株式会社FIXER Marketing&Sales Division ストラテジスト エンタープライズ、特に地域金融機関を中心とした金融業界のお客様に対してソリューションの提案営業を中心に活動しています。 その他、各パートナー企業とのアライアンス、イベント等での企画も担当。 主な業務であるエンタープライズクラウド、金融IT、ニュース、趣味であるPythonによるデータ分析やデータサイエンスのコンペティションサイトKaggleへの挑戦などについて発信していきたいと思います。 よろしくお願いします!

皆さん、こんにちは。金融ITに関する本投稿も第5回となり、この回を持ちまして講演で話した内容は一先ず完結となります。

さて、前回では金融ITのクラウド化の潮流から生まれた事例をいくつかご紹介しました。ある種フラッグシップ的な取り組みがなされる一方で、金融クラウドにまつわる様々な誤解や混乱も根強く存在します。本稿では、私が経験した金融クラウドに対する誤解のうち、代表的なものをいくつかご紹介したいと思います。

誤解1.これまでと同じ開発方式を依頼した結果、見積もりが想定外な金額になる
誤解2.クラウド化すれば“どんなシステムでも”コストが削減できると信じている
誤解​3.そもそもコスト削減の議論しかしていない​
誤解4.クラウドだからセキュリティはあてにならない or セキュリティは丸投げできる​
誤解5.クラウドと仮想化を同一視している
誤解6.既存のアプリをマイクロサービス化/サーバレス化したい

誤解1. これまでと同じ開発方式を依頼した結果、見積もりが想定外な金額になる ​

これまでの連載でも触れたように、金融システムの開発ではいわゆるウォーターフォール型が標準となっています。定型的な処理をきっちりとこなすためのシステムであればそれも良いのですが、エンドユーザの目に触れるサービス開発においてウォーターフォールモデルに従い変更を許可しないようなプロジェクト運営をしている場合、クラウドであってもコストは下がらない、あるいは上がってしまうこともあります。
新規サービス開発においては、必ずしも最初からフルスコープの提供を目指さず、継続的にデリバリしていく開発方式をお勧めします。

誤解2.クラウド化すれば“どんなシステムでも”コストが削減できると信じている

クラウドとオンプレのコスト比較をする際、移行前と後のサーバのランニングコストのみで検討されているケースをしばしば見ることがあります。
クラウドの本質はインフラ構築の自動化と運用の省力化であり、コスト比較の際は是非インスタンスの価格のみでなく総合的な構築〜運用までの負荷の視点から捉えていただけると良いかと思います。

誤解​3.そもそもコスト削減の議論しかしていない​

クラウドはコスト削減にも効果的ですが、どちらかといえば新しいサービスを高速に開発してリリースすることに向いています。最初は知見を蓄える意味でもコスト効果が問われるようなプロジェクトから開始することは合理的ですが、その先に「攻めのIT」としてのクラウド活用も併せてご検討ください。

誤解4.クラウドだからセキュリティはあてにならない or セキュリティは丸投げできる​

セキュリティに関する誤解は最も典型的なものです。これまでの金融システムの常識では、自分たちの物理的な関与の及ばない範囲に顧客情報を預けることは非常識とみなされていました。
AzureであれAWSであれ、パブリッククラウドではデータセンターのリソースを共同利用することにはかわりはありません。しかし、設計によって他の領域からアクセスを完全遮断するようにネットワークを構築できますし、インターネットに通信が暴露しない専用線も提供されています。
いずれにせよ、システムの性質・重要性・最低限必要な可用性を見定めた上でクラウドに顧客情報を預けることはFISC安全対策基準の第9版に記述されるように十分検討に値します。

誤解5.クラウドと仮想化を同一視している

クラウドの技術の中で仮想化が重要な役割を果たしていることは間違いありません。例えばAzureではHyper-Vが使われていますし、オンプレでもVMWare等で仮想化することは当たり前となっています。
しかし、前述のようにクラウドの本質は仮想化そのものではなく、その結果もたらされるインフラ部分の抽象化と効率化です。「仮想化しているからクラウドまでは必要ない」ではなく「仮想化まで至ったのだからクラウド化でもっとメリットがある」とポジティブに捉えて頂きたいと思います。

誤解6.既存のアプリをマイクロサービス化/サーバレス化したい

既存のアプリケーションを所謂クラウドネイティブな形に再構築したい、という需要も最近ではよく耳にします。それ自体は新しい取り組みとして推進すれば良いと思いますが、一方でMicrosoftのクラウド化ロードマップにあるように既存のオンプレミスで稼働するアプリケーションをクラウドに最適化するにはコードとアーキテクチャの大きな変更を伴います。
もしクラウドネイティブ化の俎上に登っているアプリケーションが多大なコストをかけてでも将来的な価値を生むのであればその価値がありますが、もしそうでないならクラウド化してもビジネスの競争力に繋がらないという残念な結果になってしまうことでしょう。

以上、金融ITの現場でよくある種々の誤解をご紹介しました。
冒頭で述べましたように、本稿を以てこの連載はひとまずの完結となります。金融ITのクラウド化は確実に推進されているものの、足元ではまだまだ理解と活用状況にムラがあるということをご理解頂けたのではないでしょうか。

これからもFIXERは金融機関様に新たなITの競争力をご提供すべく邁進して参ります。もし本連載で概説したような状況に当てはまる場合は是非当社までご相談いただければ幸いです。

お読みいただきありがとうございました。

株式会社FIXER Marketing&Sales Division ストラテジスト エンタープライズ、特に地域金融機関を中心とした金融業界のお客様に対してソリューションの提案営業を中心に活動しています。 その他、各パートナー企業とのアライアンス、イベント等での企画も担当。 主な業務であるエンタープライズクラウド、金融IT、ニュース、趣味であるPythonによるデータ分析やデータサイエンスのコンペティションサイトKaggleへの挑戦などについて発信していきたいと思います。 よろしくお願いします!

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