デザイナー出身者が大学院でHCI分野の機械学習の研究をはじめた頃のお話

こんにちは!FIXER新卒社員の加藤です!cloud.config Tech Blogを書くのは今回で2回目です。初回の投稿では、ちょっとした自己紹介をしているので良かったらこちらからご覧ください~!

現在は、筑波大学大学院の博士後期課程に在籍しながら、社会人博士としてFIXERで働いている自分ですが、今回は、「修士(博士前期課程)で行った研究」について、簡単に紹介したいと思います。(修士1年の時の研究内容なので、約4年ほど前の研究になってしまうこと、ご了承ください💦)研究内容についてお話する前に、修士の研究テーマが決めるまでのちょっとした背景をお話しします!

学部時代のパリコレでの経験

学部時代、私はグラフィックデザインや映像などを中心としたデジタルアートを専門としていました。その中で、ハイブランドによる世界に向けたファッションの発表会である「パリコレクション」や「ミラノコレクション」での業務に携わる機会をいただき、学部4年から修士1年までの2年間は、ヨーロッパと日本を行き来していました。その2年間の中で、たくさんの一流のファッションやデザイナーの方々と出逢い、本当に貴重で素敵な経験をさせていただくとともに、多くのことに気づかされました。

ファッションというものは、デザイナーの感性や経験に基づいて服やブランドが作り上げられていきます。そのため、他の業界と比較すると、IT導入などの技術的進歩が遅い業界でもあります。また、今となっては世界的な義務となってきているSDGsについても、私たちの生活で必要不可欠で衣服だからこそ、業界全体として地球環境の改善に努めなければいけないことが多数存在します。これらのことについて、実際にファッション業界に携わることで身をもって感じたため、デザインの専門性とファッションについての経験を活かしつつ、最新技術を率先して応用できるような自分となって、ファッションをアップデートしてみたい!という気持ちが芽生えました。そこで、アートと情報学の強い筑波大学に進学をし、以前から興味のあった機械学習と好きなファッションを組み合わせた研究をスタートさせました✨

ファッション×機械学習の研究からはじめてみた

「 興味のあった機械学習と好きなファッションを組み合わせた研究 」ってなに?と思ったそこのあなた!今からゆっくり紹介していきますから安心してください~笑

私の修士の研究では、「人間と機械知能の連携による新たな創造的なデザインの制作過程構築」というテーマで研究をしました✨この研究テーマからなんとなく、どんなことをやったかということは想像できるかな?と思いますが、ざっくり言うと、「人間とAIがコラボレーションして、新たなファッション制作プロセスをつくろう!」みたいな感じです。この研究テーマのような人間と技術の関係性についての研究分野をHCI(Human Computer Interaction)と呼びます。

基本的にファッションデザインというものは、デザイナーがその年のトレンドなどをデザインとして入れつつ、新しい服のデザインをシーズンごとに制作し、発表していきます。その上で、デザイナーブランドデザインを維持しなければいけないため、デザイナーが「命」です。しかし、いろんな要因でデザイナーがいなくなってしまうことは少なくありません。そのブランドの命であるデザイナーがいなくなってしまうことで、ブランドの存続は脅かされてしまいます。その問題を解決するために、AI(以下、機械学習)による画像の特徴抽出を応用して、そのデザイナーの継承を可能にし、実際の衣服が制作できないのか?と考え、私の修士のテーマとなりました。

服を作るには、大きく分けて、3つの段階があります。1つ目は、「デザイナーによるデザインスケッチの作成」。2つ目は、「パタンナーによる型紙の製作」。3つ目に「型紙をもとにした衣服の製作」です。研究の中では、1つ目の「デザイナーによるデザインスケッチ」を「機械学習によるデザインスケッチ」に変えて、それ以降の2、3つ目の製作フェーズでどういった結果が得られるのか?ということが主な研究目的です。

具体的には、特定のファッションブランドの統一感のあるスナップ写真などを、機械学習の入力となるデータセットとして使用し、画像内に写っている衣服から「○○っぽい」という特徴抽出が可能なGANGenerative Adversarial Network)という画像生成技術を使って、ブランドの特徴を表した画像生成を行い、画像を出力します。その出力画像を用いて、ある特定ブランドのパタンナー(スケッチなどから衣服をつくる素となる型紙を製作する職人さん)が型紙をつくります。その型紙をもとに、仕立て屋さんが実際の服を製作します。実際に、デザイナーによるデザインを元に製作した服と機械学習によるデザインを元に製作した服と違いがあるのか?を調査しました。

結論から言うと、人間とAIの区別はできませんでした!!という結果が出ました。これを聞いた現役のデザイナーさんは、「自分の仕事がなくなってしまう….😢」と感じてしまう方も多いと思いますが、仕事を奪うAIではなく、人間のスキルをより良い方向に活かせるような、人間の協力者としてのAIが発展していけばいいなと思っています。この研究は論文としても国際学会で採択され、世界最大のアートの祭典である「Ars Electronica」で「STARTS PRIZE」にノミネートしていただくことができました。大学院に入ったばかりの頃はわからないことだらけでしたが、こういった成果を出すことができて、本当に嬉しかったです🥰

おわりに

余談ですが、もともと自分は、今までお話してきたようにド文系のデザイナー出身なので、プログラミングなどの経験はほぼ皆無で、Webをちょこっと作れるだけでした・・・💦そのため、一番最初は、Linuxのコマンドから始めて、徐々に機械学習に必要なプログラミング言語のPythonやフレームワークのTensorflowやPytorchなどを、所属した研究室の同期や後輩に教えてもらいながら、頑張って勉強していました(笑)卒業制作では基本はモノづくりであったため、論文についても、未経験で、論文の書き方や参考文献の探し方など0からすべてを勉強しました😊

実際に技術になれるまでは、「何がわからないかわからない!!」という状況ばかりですが、とにかくなれるまで 「THE 根性☆」で、コツコツあきらめずにスキルを磨きました。現在は、より専門的なCGによるファッションデザインのシミュレーションやUI・UXに関する研究をしています。文理融合は、二つの分野を専門とするため、難しいことではありますが、できることや見えることも増えるため、深みが増して、とても楽しくなります!だから、大学院に入学するとき、情報学を選んでよかったなあと心から思えます。

これから、FIXER社員として、自分の強みである文理融合の経験をいかして、研究を進めていきたいと思います!

FIXER Inc. 加藤 奈津実
  • FIXER Inc. 加藤 奈津実
  • かとうなつみ(Kato Natsumi)/ Research Scientist
    スイカ好きでマイペースなリサーチサイエンティスト