文系大学生がエンジニアになるまでとこれから
2023-04-14
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はじめに

こんにちは、初めまして。2023年新卒入社した、國學院大學文学部日本文学科出身の本多亮介です。今回は文系出身の私が、エンジニアとして入社するまでにしてきたこととこれからの展望について語っていきたいと思います。

大学での専攻と何を学んできたか

私の通っていた國學院大學は古典と民俗学で有名な大学であり、全国で二校しかない神主の免許が取れる学校でもあります。有名人ですと狩野英孝さんが本校で神主免許を取りました。

そんな大学で私は大きくふたつのことを学びました。それは古典と民俗学です。

古典では、私は源氏物語を輪読する研究会に入っていました。平時は毎週定例会を行い順番で発表しました。夏休みには自分でテーマを決め研究発表を行いました。私は紅葉の賀の巻と花宴の巻、柏木についてです。

民俗学では、ゼミで祭りや伝説について研究しました。卒業論文では、柳田国男の竹取物語の議論を使って、2chの怪異である八尺様が美少女化、ミーム化することの説明を試みました。

ここまでtech blogなのに古典やら民俗学やら話されても、はてな?と感じた人が多いかもしれません。しかし、これらのことはテクノロジーと全く無関係なものではないのです。例えば、古典を一行一行輪読する思考力はコーディングのそれと近いかもしれません。また祭りは場の共有という点においてメタバースと関りがあります。VRと能を掛け合わせたVR能というものもあります。また、昨今取り沙汰される大規模言語モデルにおいて文系のコーパスや言語学の知見は見逃せません。クラウドにおいても古典のクラウド化やコーパスにおいては遅れており古典サイドに有用であるばかりか技術面での事業として大きな潜在性があると思います。このように技術と文系知の連関を私が信ずるには理由があります。それは私が技術に目覚めたきっかけとなった出来事でした。

エンジニアを目指したきっかけの出来事

私がエンジニアを目指したきっかけはある文学の学会に行ったことでした。それは、「平成30年度全国国語国文学会夏季シンポジウム」でテーマは「AI時代に、国語学・国文学は何をすべきか、大学は何ができるのか」というものです。この学会は平成30年つまり2018年に二松学舎大学で開催されました。この学会で二松学舎大学と大阪大学の石黒浩教授が共同で開発された、夏目漱石アンドロイドが『夢十夜』を朗読するデモが行われました。石黒浩教授はヒューマノイドロボットの研究で著名で二松学舎大学は夏目漱石と関りがあります。

私はこのデモを見て、幼いころ本で読んだようなことが、研究が進み実現可能かもしれないことに衝撃を受け自分も何かやってみたいと考えるようになりました。

紆余曲折とVRに出会うまで

学会を見て衝撃を見た私はTwitterやニコニコ動画で制作している人を探したり、『CPUのつくりかた』という本を読んで自分でも作ろうと秋葉原の秋月電子通商や千石電商に通ったり、ツクモロボット王国で特価になったプリメイドAIを買ったり、ubuntuやTensorFlowを試したりしました。しかし初歩の初歩からわからないために手詰まりになってしまいました。

そんなときにTwitterで見つけたのがGOROmanさんのOculus QuestでプリメイドAIを操作するデモでした。GOROmanさんはOculus Questを開発したパルマー・ラッキーと話してOculus Japan創立に関わった方です。私はこのデモを見て、攻殻機動隊みたいに遠隔で存在できることに衝撃を受けVRに興味を持ちました。中でも遠隔で存在できること身体拡張に興味を持ちました。

VRインカレサークルに入るまでとそこでやったこと

私はVRに興味を持ってから、Oculus Quest、Meta Quest 2(旧Oculus Quest2)、次いでVR ReadyのデスクトップPC、Valve index、各種トラッカーなどを購入し、ツールを試したりゲームをしたりしました。

そしてインカレのVRサークルに入ることにしました。サークルに入ってからは仲間もでき色々な経験ができました。私はこのサークルで展示会と文化祭で二度展示を行いました。どちらもチーム開発でした。

一度目はVR脱出ゲームで、謎が解けたら部屋から脱出できるというものです。私はそこでスタート画面からゲーム画面へ遷移する箇所を担当しました。シーン遷移のスクリプトはC#を使うのですがUnityも初めてであったので苦労しました。そんな私ですが使ってみたい機能がありました。それはPassthroughという機能です。HMD(Head Mounted Display)は通常被ってしまうと周りを見ることができません。Passthroughを使うとHMDを被ったまま周囲を確認することができます。ただし、出た当初は白黒で現在はカラーでも見られるデバイスもあります。この機能をゲームに組み込むことによって、Mixed Realityつまり現実世界とVirtualな世界がつながったように感じられるのです。これを使い私は現実世界から脱出する部屋へ迷い込むような演出にしたいと考えていました。しかし、当時はMeta Quest 2(旧Oculus Quest2)が出たばかりで、それに対応するSDKもまだ充実しておらず情報も少ない状態でした。そのため自分のエラーが新しい機能が対応していないことに由来するのか、自分のUnity知識が不足しているために起きているのか分からず行き詰まってしまいました。結局、Passthroughは諦め、最低限の機能のみ実装することにしました。ゲームのメインのところは他の人が担当し、ゲーム全体としての出来は良く盛況に終わりました。

その一年後に文化祭がありそこでも作品を出しました。それはポリッドスクリーンを用いたvtuber体験です。ポリッドスクリーンとは透過スクリーンの愛称で、これを用いることによってキャラクターが画面の中ではなく現前としてそこに存在しているような体験ができます。この展示ではvtuberと話せたり、トラッカーを使ってvtuberになれる体験を提供しました。この展示も文化祭全体の展示も盛況に終わり充実した経験ができました。

イベント主催

上記のような充実した体験ができた私ですが、その体験の恩恵を受けたことに対して自分が全体にどれだけ寄与できたかに関しては疑問でした。そこで私は、自分でもVirtual Realityの普及啓蒙活動ならできると思い、サークル運営のWeb広報を引き受けることにしました。Web広報の仕事はTwitterとWebサイトの運営です。

そんなあるとき、サークルの先輩が全国のVRサークルを集めcluster上で発表会を行った記事を見つけました。その発表会には研究者の方も登壇されていました。そこでの内容は以前私が目にしサークルに入るきっかけとなった言葉がありました。

それを見て私は思い付きでサークルのslackでまたこのイベントを開いてみたいと呟いてみたところ、その先輩が反応してくださり色々質問ができました。これは引くに引けないと思い早速slackのチャンネルをたてました。そこから全国の大学名、そこからサークルを調べ興味を持ってくれそうなサークルに片っ端からTwitterでDMで連絡を送り、新しくたてたdiscordサーバーに招待していきました。その後に、サイトの作成(キービジュアル、コーディング、サイトデザイン、内容)、clusterの会場おさえ、YouTube配信、スケジュール調整やゲストの招待、タイムテーブルや進行の内容、当日スタッフ確保などやるべきタスクが山積していました。仕事が多く詳しくないツールもあり困っていましたがslackで進捗情報を出し続けていたためほかの部員や先輩が声をかけてくれミーティングを行ってタスクを分配することで事なきを得ました。当日も多くの人が手伝ってくれたので無事に終えることができました。

就活

私はサークルに入る前、ひとりで色々試して上手くいかなかった経験から単に知識だけでなく暗黙知や雰囲気を知るため私はコミュニティに入りたいと思うようになりました。そのため会社のインターンなどに何社か応募しましたが経験不足からか不採用でした。そのうちの会社のひとつの面接で自分でも作ってみたらと言われ、なるほどと思い作ってみることにしました。しかし一人だと不安なので以前から気になっていたサークルに入ることにしました。

サークルに入った後もインターンを何個か受けましたが自分の軸が定まらず採用には至りませんでした。就活エージェントに何社か登録し進めていましたが、卒論や単位のことがあって思うように進められませんでした。漸く本腰を入れられるようになったのは卒論の目途が立ってからでしたが、選考も少なくなっていく中で他の理系の学生と比べ見劣りしているのが実情でした。それでもエージェントなどを通じて何社か内定をいただくことができました。しかし私は納得がゆかず就活をだらだらと続けていました。

そんなとき一通のメールが届きました。差出人はFIXERで、この会社は浪人時代の友人が以前勧めてくれた会社ですが忙しく説明会だけ行って選考には進めていなかった企業でした。内容はメタバース会場で就活生向けの会社説明と就活に未だ悩んでいる人への相談を受けるというものでした。これを見て私にぴったりの内容だと思い、早速参加フォームを記入しました。

イベントではせきぐちあいみさんというVRアーティストの方とFIXER社員の方がゲストとして参加していました。私はこのイベントで自分の現状を赤裸々に告白し相談しました。メタバースに情熱を持っていること、内定をもらっているが自分の方向性とは異なるため迷っていることなどです。そんな私の質問にせきぐちあいみさんは、そうであればやってみたらどうかと後押しの言葉をくれました。その言葉をきっかけに私はFIXERの方と面談を組む予約をしました。面談ではこれまでの経験が企業とマッチしているとのことで選考に進むことになりました。選考では今までの経験を話しました。結果は採用で私の技術に対する熱意とポテンシャルが買われてのことだと思っています。
 


おわりに

私は以上のような道程でエンジニアとして新卒採用が決まりました。しかし、これは始まりでありこれからが本当の始まりです。ほかの人よりもいっそう険しい道のりが広がっていることが予想されます。しかしながら、私は情熱と仲間の力があれば乗り越えられると信じてます。私がこれまでこれたのは情熱によって駆動し仲間が助けてくれたからこそであると思います。

私は先端技術に興味がありますが、そのためには基盤をしっかりと固めなければなりません。私はここFIXERで基盤を固めつつクラウドという強みの部分をしっかりと吸収してエンジニアとして成長していきたいと考えています。そのためには皆さんの力が必要です。どうかよろしくお願いいたします。その一方で大規模言語モデルなどが取りざたされる昨今私のバックグラウンドが役に立つ場面があるかもしれません。これからはより多彩なバックグラウンドを持つ人々が必要になると予想されます。私の能力の何かがお役に立てる際にはどうぞお気軽にお声掛けください!

長くなってしまいましたが、ここまで読んでくださりありがとうございました! これからもよろしくお願いします!!

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2024/04/15
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