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突然ですがクイズです。
貴方は靴を買いにお店へやってきて、気に入ったデザインの靴を 2種類見つけました。デザインAの靴はとある発展途上国で生産されたものでした。デザインBはキャンペーン中で、1足買うと1足、その発展途上国の子供に無料で靴をプレゼントするというプロジェクトが行われているようです。値段的には双方同じくらいですが、貴方はどちらの靴を買いますか?
いち消費者としては、別にどちらを買っても構いません。正解というものは特にないクイズです。買い物なんてそんなものですから。ただ、発展途上国の子供を思ってデザインBの靴を選んだ方は覚えておいていただきたい。その選択は何もしないことよりもその国を苦しめる可能性があるということを――。
ここからポジティブ!
いやー、前回の冒頭、失敗した感じしかしないですね。実験的に入れてみた小説風の書き出しでしたが、夢落ちってことで一つ、どうでしょう? 一体どんな文体だと読み手を楽しませることができるのか、伝えたいことを伝えられるのか、SEO的にも効果的なのか、ブログという媒体で色々と実験中のMarketing & Salesチームの奥山です!
次に血迷った時には竹取物語風に書きます、多分(今は昔、ブログ管理の妖魔といふ者ありけり。オフィスにまじりてエンジニアを呼び出しつつ、よろずのネタを頼みけり。名をばFIXERの奥山となむ言ひける……)。
え? そんなことよりなんでデザインBを選ぶと国が苦しむかですって? その話はこれからゆっくりいたしましょう!
でもその前に、今までスパイがどうの情報漏洩がどうのとお話してきましたが、ここらへんで一旦、そもそも情報って何だろうってところを確認してみようと思います。
前々回の記事で情報と呼んでいたのは英語にすると「Intelligence」 、前回は「Information」の話をしていたのですが、違いに気づいた人はいますか?
何それ? 何が何だと聞かれれば、答えてあげるが世の情け!
そもそも「情報」という単語が出てきたのは明治時代。「Intelligence」の訳語として出てきました(この時代は言葉の誕生率が戦後直後のベビーブーム越え! 例えば「彼女」って単語が「おめでとうございます、元気な赤ちゃんですよー!」なんてしたのもこの頃)。元々は「敵情報知」、取得した事実の塊の中で精査分析した、敵についての重要事項がIntelligenceとしての情報なんですね。
ですから米国のCIA、Central "Intelligence" Agencyは中央情報局と日本語訳されています。これで第1話の「National Intelligence of Japan = NINJA」ネタが深く理解できたかと思います。
それと比べてInformationの方は事実の塊そのもの。こう考えるとIT(Information Technology)のInformationの海に良いものも悪いものも大量に泳いでいて、自分で精査しなければならないという残酷な現代情報社会をまざまざと突き付けられます。
つまりシリコンバレーのスパイたちは敵情報知としてIntelligenceを競ってましたが、日本の電車の中に溢れ返っているのはInformationなのです。
ここまで書いてみて、あれ? 今回テック要素薄くない? コンテンツのエントロピー大きすぎてテック要素見えなくなってない? と思いましたが、そもそも私の記事にテックテックした要素はほぼないのが通常運転でした。気体よりも自由な分子配置! (理系の知識を突っ込めばただの阿保なら踊らにゃ損々な性分のお祭り人間って思われないって天の声が言ってる気がするからとりあえず突っ込んでみる)
Intelligenceの奪い合いに負ければ、敵に自分の弱みを握られたようなものですから自陣は壊滅的ですよね。じゃあ奪い合いに負けたという事実自体を知らなければどうなるのか。
「情報の非対称性」という状況が生まれるのです。
何それ? (2回目)
はい、どーん。
取引される財・サービスの品質などに関する情報が、経済主体間で異なる状態のことを言う。例えば中古車市場において、事故車などのポンコツ(lemon)自動車の情報は売り手にはわかるが、買い手にはわからない場合のように、情報が一方に偏っている状況のことである。情報の偏在ともいう。
https://www.weblio.jp/content/情報の非対称性
さて、これを冒頭のクイズに当てはめてみましょう。
売り手のデザインBの会社は「自分たちの福祉の精神は発展途上国の子供を救っています!」という情報を提供し、買い手は「それはいいことですね!」と受け取ります。大多数の買い手は売り手の向こうにいる発展途上国の現状の情報を入手していませんが、売り手は自分たちがどこにどれだけ靴を寄付したのか、そこがどういう地域なのか、寄付したことでどうなったのかの情報を保有しています(もしくはできます。目を逸らさなければ)。
無料で靴を大量に寄付すると発展途上国で何が起こるか。
①子供たちが無料で靴を手に入れます。
うん、知ってた。
②国内の靴産業は無料で寄付される靴と競争しなければいけなくなります。
……なるほど?
③無料の物を相手にすれば、勝ち目はあまりありません。
そもそも付加価値にお金を出す余裕があるならこのキャンペーンは始まらない。
④国内の靴メーカーが撤退し始めます。
……あああ。
⑤国内靴産業は衰退し、国内生産のノウハウは消えていきます。
これが伝統的製法とかだったら悲劇ですよ。
⑥焼け野原になったところでデザインBの会社は純粋な心にキラキラとしたまなざしで言うでしょう。「随分助けてきたけど、そろそろ自分たちでどうにかできる土台ができたんじゃないかい?」
買い手の理解も得たところでデザインBの会社はキャンペーンを止め、靴は寄付されなくなり、国内の靴産業は死に絶えているので最初の時点より悪化した状況で発展途上国はポツンと残され途方にくれる。
(ついでにこの事実が大衆にバレた時にはデザインBの会社はメディアや買い手、怒れる群衆に追い掛け回される危険性もあり、リスクマネジメントの概念的にアウトです)
流石にネガティブに考えすぎなんじゃないかと思います? 実はこれ、もう何度も現実社会で繰り返されてきた失敗です。
発展途上国の国民のままならない生活実態をぼんわりとInformationとして取得し、Intelligenceに落とし込まずにいると、実際のニーズは何なのか、そのニーズを本当に叶えるには何をしなければいけないのかが見えてきません。
でもこれ、通常のビジネスでもよく見る光景じゃないですか? じゃあどうするべきなのか、そこに対するITの可能性とは――?
というところでお時間でございます。ちょっと長くなりそうなので禁じ手、前回の予告を回収せずに後編へ!